February 28, 2008
胸が痛い
スジの街大阪の繁華街、道頓堀から宗右衛門町、千日前筋を延々歩き、地下鉄御堂筋線の駅を4つ通り過ぎたあたり、船場の衣料品問屋街から本町駅に向かう途中、突然胸が苦しくなり、歩くこともままならず、心臓に手を当てて立ちすくんでしまった。
息がつまり、よろけて建物の壁にもたれ、しばらく動けなかった。
痛みで思わず“ウッ”と声がでてしまう。
青ざめた涙目の顔をかあちゃんがオロオロと覗き込んだ。
夕方のあわただしい時間で、急ぎ足のお勤め人たちの不審げな視線をヒシヒシと感じながらも、どうすることもできずに、胸に手を当てたまま歯を食いしばった。
そうして耐えて、ほんの少し痛みがひいたのを見計らい、通行人のジャマにならない建物の隅に移動し、かあちゃんがドラッグストアで湿布薬を買ってくるのを待った。
なんなんだ、この痛みは・・・。
思い当たることは、ある。
3日前の夕方、業者が店の工事をこれから始めようとするのを“いい加減にしてくれ”と追い返した。
彼らが店の裏で残材を動かしたかなにかで、外部照明のコンセントを抜いてしまったのだろう。
自動点灯しないので、洗濯機の奥のコンセントを取ろうと手を伸ばしたときに、洗濯機のカドに胸を“グギッ”と押し付けてしまったのだ。
その時はちょっと痛かっただけだったが、痛みの位置が同じだから、たぶんこれが原因のひとつに違いない。
しかしそれにしても、この突然で息がとまるほどの激痛はなんだ?!
もしや、心筋梗塞?
“反省期”のオヤジならそれも有り得ないことではない。
しかし、近親相姦では絶対有り得ない。
このまま浪花の地で散りゆく定めなのか?
おりしも、御堂筋にはこぬか雨が降りしきり、「悲しい色やねん」の街景色。
くいだおれの途上で、オヤジ逝く…。
♪ 胸が痛い 胸が痛い こらえ切れず うずくまる ♪
「憂歌団」の歌が切なく脳裏に流れる。
ヒィヒィ言いながらかあちゃんが戻ってくるのを待ち、買ってきてくれた湿布薬を受けとると、ソロソロ歩いてトイレに入った。
シャツをめくって痛む個所に手を当てれば、火のように熱くなっている。
湿布を張った途端にジンジン効いてくるのがわかった。
ようやく人心地がついたが、しかしもはやこの後の予定はなしにして、一刻も早く東京に戻ることにした。
新幹線の中で少しまどろみ、なんとか10時過ぎに自宅に戻った。
翌日。
朝一番で病院へ行った。
受付で聞かれた。
「どうされましたかぁ ? 」
「ハア、突然胸が痛いんです」
「・・・・・」
「あ、べつにフラれたわけじゃないんですけどね」
「・・・・・」
完全無視である。
ノリの悪い受付やでぇ。
アンタ、そんな態度じゃ大阪じゃやっていけへんで。
ま、ここは千住なんだけど。
レントゲンを撮った。
肺にも骨にも異常は見られなかった。
考えられることは、写真に写らない軟骨にダメージがあるということだ。
あと、“スジ”かなぁ。
さすが“筋の街”大阪である。
痛み止めと湿布をもらって帰った。
コテを振るうのには支障がない。
だが、鉄板掃除の縦の動きは痛みが走る。
それと、ツボにはいる天然ボケの笑いは辛い。
「ヨウコリン」、ボケまくるのは勘弁して下さい。
笑い死にしそうでございます。
店もオヤジも満身創痍の今日この頃でありますが、オープンに向け今夜も何かしらやってます。
10:55:15 |
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February 26, 2008
十三 やまもと
駅に下り立つ前から、オヤジの頭の中には、藤田まこと歌うところの名曲「十三のねえちゃん」がリフレインされていた。
あ、時々みてくれている「シゲちゃん」、「じゅうさん」でも「とみ」でもありませんよ。
十三と書いて「じゅうそう」ですからね。
「バカ、やっぱりおまえはションベンだな、ガッ、ハッ、ハッ」
こらこら、調子コクな「バーバーくん」。
キミはもう「auちゃん」にも忘れられた過去の男なんだから。
「やまもと」で微妙に反応するのはやめなさい。
えー、話をもどしましょう。
「やまもと」というのは、知る人ぞ知る「ねぎ焼き」の名店。
モグランポの「大阪ねぎ焼」は、この店に敬意を評してお手本にしたのだ。
で、10年経ってどうなっているかを、自らの目と舌で確認したくてやってきたのが、お父さんたちのパラダイス十三、というわけだ。
だが、こういうステキな町にあって、「やまもと」さんはしっかりそこに根ざして健在だった。
昔よりきれいに、おばちゃんとは言いがたいいい感じのお姉さんが焼いてくれる「ねぎ焼き」「とんぺい焼き」は、なんの奇をてらってもいず、直球勝負で旨い。
次々とやってくるお客さんも、なんの気負いもなく日常の食べ物として平らげていく。
新装モグランポのメニューに、ワンピースを埋めるヒントを「やまもと」さんは確実に与えてくれた。
あらためて、とても有意義なくいだおれだ。
01:26:26 |
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February 25, 2008
西へ
駅に貼ってある映画「ライラの冒険」のポスターが、「イライラの暴言」と読めてしまう今日この頃。
明け方の夢の中で怒り狂って吐いたセリフ、
「安手のマンション数こなすような仕事してんじゃねーよ!」
が耳にこびりついている。
しかしそのせいでアドレナリンが出まくっているためか、目覚めはすこぶるよかった。
9時53分発の「のぞみ」に乗車する前に、忘れず崎陽軒のシュウマイを買った。
「ヤクルトはいいの?」
かあちゃんが言う。
「ヤクルトは卒業した。ケン・ワタナベとはちがう」
「そっか、子供の頃いっぱい飲んでたから、打たれ強いのね」
「御意」
西へ向かうのは3年前の「つま恋」以来で、さらに大阪へ行くのは10年前の開店以来のことだ。
予定していたこととはいえ、大阪行きが15日ほども伸びたのは、工事の大幅な遅れのせいだ。
“この怒り、はらさでおくものか…”
今回の大阪行きの目的は、道具屋筋のお好み焼専門店で、合羽橋にはない道具をさがすためと、10年経って本場のお好み事情がどれほど変わったかを肌で感じるためだ。
なんせ、10軒開店しては5軒つぶれるという、日本一の激戦区なのだ。
奢った東京の田舎者の鼻っ柱なんて、いともカンタンにへし折ってくれる刺激があるだろう。
“そらもうメッチャ楽しみやわぁ”
春一番が吹き荒れたおかげで空はきれいに晴れ渡り、富士山がくっきりと見える。
すでにかあちゃんは夢中の人になり、舟をこいでご機嫌ちゃんだ。
どれ、プリントアウトしておいた大阪のお店情報でもチェックしましょうかね。
11:37:32 |
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February 21, 2008
サイフがない ! でもラッキー
久しぶりにバイクで合羽橋へ向かった。
天気もいいしバイク日和で、気づいたらヘルメットの中で鼻歌を歌っていた。
どういうわけだかその曲は、ミッシェル・ポルナレフの「シェリーに口づけ」だった。
きっと寝不足でハイになっているのだ。
昨日は朝8時、今日は6時半まで「林檎」の前から離れず、右の手の指にペンタブレットタコができる始末だ。
メニュー作りの最後の追い込みで、余裕を持って写真など撮りたかったのだが、今日も朝からクロス屋が来て、1階の天井のほとんどと壁の補修をするため、厨房はまるで防疫用の隔離シートのように養生がされ、とても鉄板を熱して試作などできる状態じゃない。
工事開始から3ヶ月近くたとうというのに、この体たらくはなんだ・・・。
腹がたって、腹がたって仕方がないし、唖然としているかあちゃんをひとり店に残して行くのは心配だったが、合羽橋の行きつけのお店から、注文していた鉄板掃除に使う道具が入ったと連絡をもらったので、その他の細々した物もついでに買ってくることにしたのだった。
最初の店で燗つけ器やメジャーカップなどを見つくろい、いざレジで会計をする段になって“サイフがない ! ”とポケットをまさぐった。
老眼鏡も携帯電話も目薬もポケットに入れてきたのに、肝心のサイフを持ってくるのを忘れていたのだ。
ということは、クレジットカードも免許証も持っていないということなのだ。
免許証の不携帯に気づかず、「シェリーに口づけ」なんぞ鼻歌まじりに、調子にのってバイクをブイブイ走らせていたのだった。
やはり寝不足が祟って、注意力が散漫になっているのだろう。
「すぐに取ってくるから、ちょっと待ってて」
と店員に断り、バイクにまたがりスタコラさ。
気をつけて走っていると、本日は白バイと頻繁に出くわすのだった。
危ない、危ない、ただ今のところ運がいいだけの違反オヤジだ。
サイフに中身が入っているのを確認してポケットに突っ込むと、再び合羽橋への道をスタコラさ。
「申しわけない」
店員に謝って1万円札を出すが、端数の163円の小銭がない。
ポケットをモゾモゾしていたら、
「あ、いいですよ。おまけしますんで」
愛想良く笑ってオマケしてくれた。
ラッキーである。
大阪のおばちゃんと違い、はなから「ねぇ兄ちゃん、まけてんか」などとは言えないオヤジには、163円のおまけはとってもうれしい。
合羽橋を2往復した甲斐があろうというものだ。
そして意気揚々と店に戻ってみると、まだ作業は終わっていない。
結局、朝8時から始まって終わったのは6時半だ。
怒りも煮詰まって干涸びてしまうぜ。
「今度こそミスはないだろうな」
注意深く施工個所を点検し、納得すると業者は帰って行った。
明日は建具屋の番だ。
今週中には全て終わらせて、こちらのオープン準備を遮らないでくれと堅く申し入れた。
3月1日には2階席の予約が入っている。
毎年この時期に予約を入れて下さる人たちだ。
穴を空けるわけにはいかない。
というわけで、今度の土・日と来週水・木・金の夜は、練習・仕込のため何かしらやっております。
常連さんにはまたまたご協力頂くことになりますが、何ぶんよろしくお願い申し上げます。
今夜もおそらく寝るのは朝、なのだ。
01:02:07 |
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February 17, 2008
ゾロ目街道
電気と設備と家具の直しがようやく終わって、本来ならこれでもうOKのはずだが、じつはまだ直し工事が入るという不始末。
厨房と店内を仕切るスイング扉が、取付けたばかりだというのに“ギィ〜、ギィ〜”と、まるで300年前のお化け屋敷のように耳障りに鳴る他に、細かい部分の建具の直しと、1階の天井の大部分のクロスの張替えが今週ある。
まったく嫌になる。
しかしまあ、もうデカイ脚立も台車も使うことはなさそうなので、車に積んで実家の倉庫に戻した。
そしてそのまま、ホームセンターへ買い出しに出かけた。
【確率的にはものすごーく低いと思われる、ありそうでないような話】
日光街道を走っていたら、助手席の小僧がナンバー「6666」の車を目ざとく見つけた。
「うわぁ、オーメン車だ。つづいて7777のラッキーナンバーの車が走ってたりして」
と冗談まじりに言ってたら、車線を変更して前に割り込んできたワゴン車のナンバーが、なんと「7777」なのである。
なんという偶然。
「オイ、オイ、つぎは8888ってか。まさかね」
なんて言ったら、しばらくして後ろからググッと加速して横をすり抜けていったクーペのナンバーが、なんと「8888」なのである。
でぇへ〜っ、な、な、な、なんという偶然。
「そしたら今度は9999か5555のお出ましかい ? この道路は日光街道ならぬゾロ目街道かい ? 」
もう小僧と一緒になってゾロ目のナンバーを見つけようとキョロキョロ。
すると、4ケタ全部一緒ではないが、「5050」や「8686」なんて車が何台も街道を行き交っているのである。
まさにゾロ目街道だ。
「7777」のワゴンはずっと前を走り、そのままホームセンターの駐車場へ揃って入った。
すると駐車場にも「3131」やら「1010」の車が並んでいて、これはひょっとして何かあるのかもしれんと思い、ホームセンターの一角にある宝くじ売場へ直行した。
取りあえず、東京都の100円くじを10枚、小僧に選ばせて買った。
もしかして、災難続きのオヤジとモグランポを神様が哀れんで、幸運に気づけよとの思し召しかもしれない。
ムフフ、この偶然の一致に気づくかどうかが運命の分かれ道だったのかもしれん。
この先オヤジが妙に上機嫌で、丸くなっていたら、その時はどうぞ察してやってくださいまし。
新しいMac Book AirやiPod touchを愛用していたら、どうかそれも察してくださいまし。
ただし、おこぼれは期待しないで下さいまし。
人事を尽くして天命を待つ、なのだ。
22:58:14 |
mogmas |
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