May 30, 2008

脈拍異常 ?

  
少々の無理をした方が回復が早くなるなんていうのは、根拠のない精神論かもしれない。
だが、20代の若者ならそれも通用するかもしれない。

じつはとうの本人が今までそう思っていたし、実際それで乗り切ってしまったという現実があるので、四半世紀ぶりの風邪で熱が出たからといって、1週間も経てば、もういい加減平気だろうとタカをくくっていたのだ。

しかし、風邪っ引きの馬鹿野郎はズタボロの反省期をすぎ、トカゲのような回復力は外傷にはまだ少し有効だが、身体の内部にまではその神通力は通用しないことを思い知った。


今度こそ店を開けるべく、まだ本調子ではないかあちゃんを置いて、先に仕込みに向かった。
鳩尾のモヤモヤは残ってはいるものの、頭ははっきりしているし、咳ももうほとんど出なくなった。
動き出し初めの違和感はあるが、なに、仕事で汗をかいてリズムを取り戻せば大丈夫・・・・・。

息があがる。
鳥肌が立って、手先が冷たくなるが、顔面はダラダラ流れる汗まみれだ。
立ち眩み。
水を一杯飲むが、水の味が分からない。
クソッ !
タオルを頭に巻いて仕事を続けた。

何度も汗を拭うが、動くたびに滂沱のように汗が滴る。
口をあいて息をしているのがわかる。
首の後ろをつままれたように痛い。

「どうしたの、それ ? 」

かあちゃんがやってきて、開口一番そう叫んだ。

「シャワーを浴びて待ってたのさ」

そんなオバカな軽口は出なかった。
顔に蛇口があるんじゃないかと思うほど、汗が顔面を流れていたのだ。
このまま汗とともに顔も流れていきそうなほどに。

「汗とともに去りぬ」なんちゃって・・・・。

事態を自覚すると、クラクラと目眩が襲ってきて、立っていられず椅子に腰を下ろして喘いだ。

「異常」

たぶんそうだ。
このままばったり倒れそうだ。
救急車 ? いやいや、このオヤジは今まで緊急自動車に乗りすぎている。
この程度で呼んだら乗車拒否されるかもしれない。

深呼吸をして目をつぶる。
とにかく汗を拭う。
胸に手を当てると、やはり鳩尾の辺りが息苦しく、動悸が早い。
「心筋梗塞」 ? 「近親相姦」では有り得ない。
ならば、一思いにいっちゃった方が、世のため人のため、家族のためだ。

無理をして営業中にバッタリ倒れて、伝説のバカオヤジになるか、それとも医者に診てもらい、ハムレットのごとく死ぬのか生きるのか悩むのがよいか。

汗が引いて少し落ち着いたところで、かあちゃんに尻を叩かれ、店を後に医者に向かった。

「風邪じゃないかもしれませんね」

医者が楽しそうに言う。
心電図を取られ、血圧を測られた。
プリントアウトされた心電図の波形を説明され、針がピィヨーンと上がっている箇所の説明を受けた。
通常の人の心拍数は、60〜75程度なのだが、今のオヤジの心拍数は165なのだそうな。
レッドゾーンをぶっちぎる勢いのマイティーハートだ。
なにをそんなに生き急ぐ必要がある ?

心拍数が100を超える異常な状態だと、血液疾患(貧血)、精神疾患(緊張、ストレス、不隠、不安)、代謝疾患(甲状腺機能亢進症、脱水)、発熱、呼吸器疾患(低酸素状態)、心疾患(頻脈性不整脈群、心不全、心筋炎:徐脈もあり)など様々な症状が出るのだそうな。

すばらしい。
このヘロヘロなオヤジを救うべく処方されたのは、たった2種類の錠剤が2週間分だけである。
現代西洋医学と厚生労働省の努力の賜物。
姥捨て山の麓を彷徨う、後期高齢者予備軍にして、ゾンビ予備軍万歳。

さあもうノンビリ寝てるしかありません。
かといって、ドキがムネムネ、いや、胸がドキドキときめいちゃって、まるっきり眠れません。
睡眠薬のお世話にはなりたくはないけれど、明け方まで目を爛々と見開いているオヤジなんてそれこそ異様だ。

ほんとうに何度目かのお断りですが、しばらく店は開けられそうもありません。
このさい後に憂いを残さないよう、しっかり復活するまで療養致します。
少なくとも、今週いっぱいは。

軟弱をご容赦・・・・・・・。






19:01:45 | mogmas | | TrackBacks

May 27, 2008

眠れない夜

  
最悪です。

ここまで最悪だと、もうどうにでもなれって感じで、からくも居候だけは逃れているけれど、小僧にもついに咳の症状が出た。

我が家は最悪のオヤジ風邪の巣窟であります。

四半世紀ぶりの高熱は、かあちゃんにうつり、40度近い熱が2日間続き、フワフワしたハイな状態で臥せっている。

ばあさんは枯れ枝のようにゴホゴホ咳き込み、それでもまだ熱は出ていないのが幸いだ。

オヤジの熱は去ったものの、まだ熱があるときの方がハイで見せかけの元気で動けたのだが、今やまるで木偶の坊で、あちこちが痛く、飯を食べる元気もない。
しかし目だけが異様に冴えてしまい、眠ろうとしても眠れない。
何度も寝返りを打ってようやくトロトロとしてきたと思うと、鳩尾のあたりをつかまれたように苦しくなって眠りから引き戻されてしまう。

そんなことを繰り返して、たまらず睡眠薬を飲んだ。
「睡眠誘導剤」と正しくは言うのだろうか ?
今回の風邪で、医者に処方してもらったものではない。
ちょっと前に、眠れないということをブログに書いたことがあったが、それを読んだ「こちょこちゃん」のママが、「試しにつかってみたら」と持ってきてくれたのだ。

睡眠薬というものを飲むのは初めてだ。
だいたい毎晩酒を飲んでいるので、睡眠薬を併用するのがためらわれたが、今回は驚くことに5日間も一滴も飲んでいない。
まっさらクリーンに酒っ気が抜けた今をおいて、こんなチャンスは二度とないかもしれない。
1錠、もしくはその半分でいいと「こちょこちゃん」のママは言っていたけれど、死んだように眠りたかったオヤジは2錠飲んだ。
まあ、100錠も飲まなければ死ぬこたぁないだろう。

効果のほどをみるべく、横になって本を広げた。
なかなか眠くならない。
催眠術だってかかりにくいと言われた偏屈オヤジだ。
睡眠薬の1錠や2錠ごときで・・・・・、れむくなんふぁなりゃない・・・・あれ ?
まぶたとはぁぶたがふっつきそうれ、あれ ? 
よられがれてもわからないくりゃいれ、れれれれ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

爆沈 ! 昇天。

眠りを無理矢理剥がされる、鳩尾のあたりの閉塞感は堪え難く、このまま窒息して死ぬんではないかという妄想でなお眠れなかったのが、この小さな錠剤で解消された。
これはクセになる。
次の日も飲んでしまった。
ただひたすら眠る。
ふと目を開けたと思ったら、次の瞬間には眠りの中にいる。
昼夜の区別も、時間の感覚もわからず、ウトウトし続けた。

カラカラになって目が覚めた。
渇きを癒し、しまらない病人面を鏡に映してふと気がつき、体重計に乗ってみた。
すばらしい。
3キログラム減。
食わなきゃ痩せるのは自然の摂理。
ヒヒヒ、とニヤケて再び布団へ直行。
もうオヤジの体内の風邪の菌は、ほぼ駆逐されたと思う。
あとは睡眠を充分にとれば何とかなる。
だが頼みの綱の睡眠薬はもう残っていない。
明日、かあちゃんが医者へ行ったらもらってきてもらおう。
それまではなんとか自力で寝る努力をしよう。

ダメだった。
額に「冷えピタ」を貼ったせいかスースーして、目が異様に冴えてしまい、無理矢理目をつぶるよりはと、本を開いた。
文庫本を一冊一夜で読んでしまった。
読んだ本もいけなかった。
小林泰三という作家の「Nephilim ネフィリム 超吸血鬼幻想譚」というデログロな小説だったから。
この作家のデログロ度は、病気の時には相応しくない。
「玩具修理者」や「ΑΩ」というウルトラなデログロ小説よりはインパクトに欠けていたが。

悶々と眠れる方策を考え、やっと少し眠れたのが翌日のお昼頃だった。


川の字で眠る外れに、倫敦帰りのあの調子コキが、尻を出して寝ているのもかまわず、ひたすら眠ろうと目をつぶった。

調子コキにも風邪がうつるのか ?
楽しい倫敦、愉快な倫敦、ロンドン、ロンドン・・・・・




16:50:59 | mogmas | | TrackBacks

May 24, 2008

ダウン

   
市場に仕入れにいった。

仕込みをしようと、水を入れた寸胴をガス台まで持っていこうとして、力が入らず途中で引っくり返した。

めまいがする。
身体に力が入らない。

たまらず、椅子に腰掛けたら寝てしまった。

昨夜はどうやっても眠れなかった。

その反動と、薬のせいかもしれない。

かあちゃんが来て、意識が戻った。

恐れていたことが現実になった。

オヤジのたちの悪い四半世紀ぶりの大風邪は、確実にかあちゃんにもうつっていた。

医者から安静にするように言われたかあちゃんも、マスクをして咳き込んでいる。

夫婦共倒れでござい。

ここで無理すると、お客様に迷惑をかけることになる。

中途半端はいけない。

残念だが、口惜しいが、まだ店を開けるのはやめよう。

ごめんなさい。





12:25:05 | mogmas | | TrackBacks

May 23, 2008

まいりました・・・

  
熱が出た。

39度以上の熱は、約20年ぶりだ。

耳の下からアゴにかけて、リンパ腺が腫れて、顔全体が痛い。

“おたふく風邪”じゃないかとかあちゃんが言う。

店で「オタフクソース」も扱っているからといって、いい歳して自分がおたふくになることはない。

咳が止まらず、顔が痛くて、熱で朦朧としているが眠れない。

医者でもらった薬が効いてくるには時間がかかった。

夜中に39.5度まで上がった熱が、朝方には38度まで下がり、昼までには37度になった。

咳がやや治まってきたら、薬のせいかやたら眠い。

寝汗をかき、水を飲み、また寝汗をかくといった繰り返し。

またもや店を休まざるを得なくなった。

あれだけ風呂につかっていたのに、もう2日間も風呂に入っていない。

思いがけずに長い休みになってしまった。

いままでの疲れが、ここへきて一気に出たのだろう。

だが、もうこれ以上は休んでいられない。

明日は仕入れもしなけりゃならない。

仕込みもたくさんある。

ここで一気に風邪を追い出すべく、たっぷりニンニクと葱と、味噌と卵の入ったおじやを食べた。

明日こそは・・・・。






20:11:14 | mogmas | | TrackBacks

めんくい小僧の感想

  
小僧は好き嫌いなく何でも食べる。
小さい頃は食が細く、その場の雰囲気や、他人の作ったものはまったく受け入れられなくて、ガリガリに痩せてしまったこともあるが、いつの頃からか食欲大魔王が目覚め、それこそ獣のように何でも喰う。

「どう ? 」
と問われれば、
「オッケーです。ウマいですねぇ」
と、まず間違いなく答え、完食する。

そうなってから、小僧が心ならずも残した食べ物は、とにかく間違いなく不味い。
記憶しているだけで三度、どこかのとんでもないラーメン、いずれかの驚愕の親子丼、記憶から消し去りたい定食。
箸を止めてしまった小僧の前に、当然一緒にいるオヤジたちも喉を通らずにため息をついている。
どうしてこんなにおそろしい味のものを、半ば腐っているようなものを出すことができるんだろうと、親子そろって悲しい気持ちで店を出たのだった。

「これはダメですねぇ。イマイチですねぇ」

めずらしく小僧が言った。

なんでも行列のできるラーメン屋さんなんだそうだ。
ラーメンは大好きだが、ラーメン通ではないからその店の名を聞いたこともなかった。
ましてつけ麺は積極的には食べない。
大勝軒やその流れのラーメンを食べたことはあるが、開けっぴろげでおいしいと思ったことはない。
十人十色だから、無理矢理好きになる必要もないし、だいたいつけ麺というものは中途半端だからイヤなのだ。
汁の中に麺が入っているもの、食べながら熱くて汗をかけるものこそラーメンと信じている、汁好きの麺食いオヤジなのだ。

だから、いらないと言ったのに、ラーメン好きの「ヒトリモン」先生がそのつけ麺を持ってきてくれたのだ。
肉を食わないアーユルベータ男なのに、どうしてあんなに肉のエキスが溶け込んだラーメンが好きなのだろう。
“業”ですな。

で、もう食べたか ?  どうだったか ? と聞かれるので、せっかくだから作ってみた。
冷凍の麺と具材の入ったスープを寸胴で茹で、解凍し、小僧がキッチンタイマーとにらめっこして、うれしそうにカウントダウンするなか、説明書に書かれた通りに作った。
しかし麺を水でしめて冷たくしてしまうのはイヤだったので、さらに熱い湯を通して所謂「あつもり」にしてみた。

店のカウンターに、「へい、おまち ! 」などとラーメン屋さんごっこをして、熱々のつけ麺を置いた。
若干の期待とともに、ひとくちすすった ? 感想は「なんじゃい、こりゃ」だ。
のどごしと歯切れの悪いうどんみたいな極太麺、みょうに甘ったるく感じるスープ、思わず小僧と顔を見合わせてしまった。
もともと太い麺は好きだが、これはいただけない。
これを個性というのなら、どうぞご勝手に、だ。
熱々にしたつもりが、二口三口でもうスープがヌルくなる。
麺の量は、まあこういう感じだから多めだが、それが仇になって最後はすっかりスープが冷めてしまった。
残ったスープにご飯を入れて食べてもおいしい、と書かれてあったので、炊きたてのご飯をぶち込んでかっ込んだ。
こっちの方がむしろ旨い。

最後まで熱々を保って、汗をかかせてくれて旨いと感じた数少ない店は、「Cちゃん」の「スチャラカ旦那」が連れて行ってくれた柏の「大勝」だけだ。
そこもテイクアウトがあって、それもいただいて作ってみたけれど、店で食べたのと同じ状況で満足がいった。
申しわけないが、「ヒトリモン」先生と三度ほどおすすめのラーメン屋さんに行ったと思うが、ただの一度も満足できていない。
今回も残念だ。

その店の意図がどこにあるのか知らないが、まあインパクトは少なくともあるのかもしれない。
しかし麺食い小僧様も納得いかないようなものに、なぜに皆の衆が群がるのか正直首を傾げざるを得ない。
並びたい人はどうぞ、というしかない。
好みは人それぞれだから、本人がよければいいさ。
その店の名は「六厘舎」というのだそうだ。
たぶんもうすすめられても食べないだろう。



15:02:00 | mogmas | | TrackBacks