May 04, 2008
気の抜けた生ビールを飲む女
「あのー、生ビールと普通のビールの違いってなんですか ? 」唐突に“雨女”が言った。
「チャゲ&飛鳥」の歌じゃないが、ほんとうに ♪ 君に会う日は 不思議なくらい雨が多くて ♪ お茶引きの夜になったら、黙っちゃいられない彼女とは、なにかとカウンターごしに話をする。
彼女がビールを飲むことは少ない。
いつも梅酒やサワー系のものからはじまり、調子が乗ってくれば焼酎までいくが、生ビールは滅多に飲まない。
そんな彼女がめずらしく生ビールを飲んで、ふとつぶやいたのだ。
こう説明してやった。
缶や瓶のビールは最初から炭酸が入っているので、グラスに注ぐと泡が出るが、お店の樽は出来たてをそのまま詰めているので、注ぐ時に炭酸をいい具合に足しているから新鮮でウマいんだ、と。
彼女は“なるほど”と信じた。
だがもちろん、その説明はデタラメである。
「そっかぁ、炭酸が入ってないってことは、つまり気の抜けたビールみたいなものってこと ? 」
一瞬絶句し、次の瞬間大爆笑した。
千住で一番生ビールに気を使っていると自負するオヤジに向かって、「気の抜けたビール」と言ってのけるとは、思いもよらなかった。
これがチャライ兄ちゃんだったら、即店から叩き出してやるところだが、普段は賢く、明るく、ムードメーカーな“雨女”が言ったものだから、そのボケッぷりに涙が出るほど大笑いした。
“雨女”は自分の失言をひたすら取りつくろうと、しどろもどろになって話し続けるのだが、それがまた可笑しくて、しばらく笑いの発作が収まらなかった。
ようやく落ち着くと、自らの失態をもネタに変えようとする前向きな“雨女”は、どこが笑いのツボなのかを考え始めた。
「わたしって、天然になれるよね ? 殿方に可愛いって言われるような天然になれるといいなぁ・・・」
う〜ん、願望かいっ。
キミならなれる !!
だが、生ビールとそうでないビールの違いを騙し続けるのは忍びないので、ここできちんと明らかにしておこう。
生ビールって、なんなのサ
◎ ビールは、大麦麦芽を酵母の力によって発酵させる。
この生きた酵母がビールの中で糖分と結びつき、アルコールと炭酸ガスに変化していく。
ビールの糖分が無くなれば発酵は止まり、酵母は死ぬが、死んだ 酵母やそのカスは、「オリ」としてビールに残ってしまう。
そのため、ビールを瞬間加熱・殺菌することによって酵母菌を殺し、ビールの品質を安定させていた。
近年までこの方法が主流で、キリンラガービールなどがその代表銘柄。
しかし、今お店で売っている缶や瓶のラベルに注目。
ほとんどの銘柄は「生ビール」と表示されているハズだ。
これは加熱、殺菌処理をおこなっていないビールということだ。
製造技術が進歩したおかげで、今のビールは熟成の最終段階 で熱処理をしない代わりに、濾過処理で酵母等を取り除く。
飲食店の樽ももちろん「生ビール」だが、この樽の中には酵母が入っている。
酵母が入っているということは、醗酵が進んでいるということなので、毎日の温度管理や鮮度管理、圧力管理が厳しくなるのだ。
酸っぱいビールや濁ったビール、ヘナチョコな泡の“気の抜けたビール”を平気で出す店は、その管理を怠っているという証明だ。
オヤジがお掃除ビールをありがたく頂き、ときには無理矢理にも樽を空けてしまうのは、この厳しい3原則を厳格に守り、つねにウマい生ビールを注ぎたいからなのだ。
ここまではいいですか“雨女”さん ?
「じゃ、みんな生ビールじゃん。おんなじじゃん」
そう、「生」ってのは「Draft」が語源で、大航海時代に船に乗せられ水替わりに飲まれていたビールも樽詰めで、海賊「ジャック・スパロウ」もドラフト=「樽からビールをひき出し」て飲んでいた名残りで「樽」=「生」と慣習的に使われるようになったのだ。
瓶も缶も「生」です。
だが飲食店の「生」がウマいと感じるのは、上記のような涙ぐましい努力の結晶としてビールサーバーから丁寧に、綺羅星のように注ぐから、グラスやジョッキをキンキンに冷やす手間をかけるからなのだ。
けっして気の抜けたビールではないのである。
このへんで「ガッテン」して頂けたでしょうか、“雨女”さん。
いやさ、あるときは「とっくりさん」、またあるときは自称女子大生、そしてまたあるときは日本一ちっちゃいバレーボールプレーヤー、しかしてその実態は、前へ出る女small「akkoちゃん」その人なのだ。
「akkoちゃん」画伯の描く麒麟。
お見事 !!
10:20:00 |
mogmas |
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