October 14, 2006

愛育病院のことから・・・

  
広尾の駅を出て、ナショナル・マーケットの脇を六本木方面へ木下坂を上り、左手に末日聖徒イエス・キリスト協会のチャペルを見ながら、有栖川宮記念公園と都立中央図書館を通り過ぎると、「愛育病院」の正門に出る。
今やその名はすっかり世間に知れ渡り、一時は患者や関係者は野次馬とマスコミをかき分けかき分け大変なことだったろう。
でも何はともあれ、「お世継ぎ」が無事出産・退院したので厳戒態勢はとかれ、評判を聞いたお母さん予備軍が詰めかけているのかもしれないが、閑静な日常にもどったろう。

「愛育病院」の正門を通り過ぎ、有栖川ヒルズを横目に南部坂の方へ交差点を右折、少し行くと通りの向かいにカタール大使館とマダガスカル大使館が見えるあたり、建物の脇の小さな門を開け、通路を進んでさらに門の鍵を開けて入ると、「愛育養護学校」の校庭にでる。
人に薦められてここへ初めてきた時、寒い時期だというのに裸の子供たちが小さな庭を駆け回り水を掛け合い、泥だらけになって遊んでいる光景に出くわした。
オヤジの背丈ほどもある太った男の子が、白い息を吐き、無邪気に、まるで小熊みたいにニコニコと低い雄叫びをあげて抱きついてきたときには、ちょっと後じさりしてビビッてしまった。
その冷たいがプヨプヨの裸の体は、動き回って火照っていた。
まるで曇りのない瞳で、一緒に遊ぼうというように体を揺する。
心の赴くまま、自由な遊びを子供たちは無心に体感しているのだった。

小僧が就学前の3年余り、何度もここへ通った。
それまで自閉症や知的障害の子供たちと身近に接したことがなかったオヤジは、最初戸惑い馴染めなかったが、小僧はといえば、なんでも思いのままに遊べるここの環境にすぐに溶け込み、あっちこっちにクレヨンを走らせ、プラレールを延々繋ぎ、ボディペインティングでサイケな身体を紙の上に転がし、夢中で自己表現をして遊んだ。
そうしているうちに、食べ物も食べられるようになり、言葉も出てくるし、他所へ行っても固まらないようになった。
面倒を見てくれる先生たちは、ちょっと目を離すと何をしでかすかわからない子供たちを暖かい目で見守ってくれて、付き添いの母親たちは安心して控え室で談笑できるのだった。

あれから20年も過ぎた現在も、1年に1度同窓会の案内が来て、小僧が1人で出かけたり、かあちゃんと2人で行ったりして、当時の先生方やお母さん方と再会し、懐かしみ楽しんでいる。
しかし、近年の少子化はこの養護学校にも影響し、予算や運営費は年々厳しくなっているらしい。

障害を持った子供たちが少なくなっているのならいいことだが、神様の気まぐれはそれこそ差別なく突然降りかかってくるものだ。
国籍や性別、裕福でも貧乏でも関係なく、何が原因かはわからないが、いわゆる障害児は生まれてくる。
天皇家だってそれはまぬがれない。

ケネディ家でもその事実があったので、故ケネディ大統領の妹ユニス・ケネディ・シュライバー夫人が自宅の庭を知的発達障害のある人たちに開放してスポーツを楽しんだことをきっかけに、「スペシャルオリンピックス」が発足された。
ターミネーターの(知事よりこっちの方がいい)シュワちゃんが映画の宣伝のために来日した記者会見のあと、子供たちをステージに上げこの「スペシャルオリンピックス」の活動をアピールしたが(シュワちゃんはケネディ家と縁戚関係ですから)、それはあまり日本のマスコミでは取り上げられなかった。

見てわかる障害者にはこのところ配慮がされてきたように感じるが、ちょっと見ではわからない知的発達障害のある人たちにはまだまだ世知辛い日本だと思う。
さて我が家では何ができるだろうかと考えた時、特別なことは何もしないということを話し合った。
障害を障害と思わない。
だから普通に生活し、自分でできることはする、難しいことは助ける、個性として認める、隠したり、卑屈に思ったりしない。
そうやって今までやってきた。

ありがたいことに、モグランポの常連の皆さんは、小僧に気軽に声をかけてくれて、普通に話してくれるし、時には冗談も言ってくれる。
小僧はそういうことがとてもうれしく、どこかへ旅行すればお土産を買ってきたりもする。
買い物に行く商店街の人たちや近所の人も、気をつけて声かけをしてくれるので、いままでどんなに助かったことだろう。

回りの大勢の人に助けられて生きていくのだけれど、やはり歳をとるほどに寂しくなると思う。
だからオヤジの究極の目標は、小僧よりも長生きすることだ。
とにかく生き長らえて小僧を見取ってから死にたいと思う。
まあ、こんな生活をしているからどうなるかわからないが、けっこうしぶといかもね。

小僧のブログがまた再開しました。
初めて手にした携帯で更新できるので、うれしくてしょうがないんだろうね。
わけわからん内容であります。
ま、親もいっしょかぁ・・・。

11:35:00 | mogmas | | TrackBacks