April 22, 2006

メルおじさん吼える!!「プロデューサーズ」

ミュージカル映画はあまり好きじゃなかった。
「ウエストサイド物語」は何度か細切れで見たものの、通しで劇場で見たことはない。
そう告白したら「悪魔のあっくん」に“フン”と言われてしまった。
でも「雨に歌えば(Singin' in the rain)」は好きで、何度も見ている。
ジーンケリーの踊りは圧倒的にすばらしい。
歳をとるにつれてミュージカル映画の魅力がわかってきたようだ。
MGM全盛の頃のものもいいが、「オール・ザット・ジャズ」や「コーラス・ライン」、最近の「シカゴ」なんかもよかった。

でも、ミュージカルは陽気なコメディの方がもっといい。
「リトルショップ・オブ・ホラーズ」のサイコでクレイジーな笑いとノリのよい曲は、時々間を置いて見たくなる。
見終わった時のあと味が最高だ。

そんな嗜好だから、メル・ブルックスのミュージカル映画は興味があった。
ブロードウェイで大ヒットしたものの映画版だそうだが、もともとは1968年のメル・ブルックスの監督デビュー作のリメイクだ。
TUTAYAさんでその映画を探したがなかった。
だいたいメル・ブルックス作品自体が少ない。
「ブレージングサドル」と「サイレント・ムービー」があるのは確認済みだが、探し方が悪いのかどうか、他の作品も片っ端から見直したいので、わかりやすく監督別で置いてください。

あらゆるジャンルの映画や小説、演劇、人物、人種をおちょくりパロり、パワフルでいたずらっ子のような演技と演出で笑わせてくれるのがメル・ブルックス作品の魅力。
もう80歳を過ぎているだろうし、どうしているんだろうと思っていたら、この映画の話題だ。
ブロードウェイでも現役でご活躍だとは知らなかった。
しかも数々の賞を総なめ、彼自身はアカデミー賞、トニー賞、エミー賞、グラミー賞の4賞をすべて制覇した世界でわずか7人しかいないアーティストのうちの1人だ。

このすんごい評価の才人が作った、おバカで、下品で、ウイットにとんだ、おかしくてハッピーな映画、それが「プロデューサーズ」だ。
一癖も二癖もあるクレイジーな登場人物が、魅力全開で歌い踊り、流れるようなカメラワークがミュージカル映画の真髄を堪能させてくれる。
2時間14分の上映時間はあっという間に過ぎていく。
史上最低のミュージカルを作って大もうけを企むなんて話を、お上品に受けとっちゃあいけません。
ヒロイン・ウーラ(ユマ・サーマン。惚れちゃうぜ!!)に思わず下半身がスタンディング・オベイションしてしまう、というセリフやら、80過ぎの老婆のアソコをマグマのようにしてやるだの、お下劣極まりないセリフの応酬だが、不思議といやらしくなく、ゲスの会話にならないところがメルおじさんの面目躍如といったところだ。
それにもまして、主演のネイサン・レインはすごい。
ブロードウェイで名前だけで客がよべる大スターらしいが、見た目は普通のおじさんだ。
そのパワフルな演技に脱帽。
実に味のある、憎めないオヤジだ。

また随所に往年のMGM映画のオマージュのようなシーンが満載で、知る人は知るパロディのオンパレードにうれしくなってしまう。
映画のための舞台とは異なるシークエンスも見逃せない。
大勢の老婆の歩行器を使ったダンスや、映画ならではの華麗な見せ場も多い。
マナーの悪い観客は、エンドタイトルが流れ出すと席を立って出て行くが、それではこの映画を見たことにならない。
最後の最後に「メル・ブルックス」おじさんが登場し、一言吼える。
それを見届けて、とっとと劇場をあとにしなければいけない。
どれを取ってもメル・ブルックスの映画だ。
もう一度見たいくらいの映画だった。


09:59:00 | mogmas | | TrackBacks