June 26, 2006

カネゴン強奪計画


慌ただしく忙しい時には聞こえなかったお客様の会話が、峠を越すと自然に耳に入るようになってくる。
テーブルについた女性二人は、順調に飲みかつ食べ、お話が盛上がっているようだった。
話の中に、何度か「カネゴン」「ピグモン」という名前が出るのをオヤジは聞き逃さなかった。
どうやら彼女たちは、店頭に置いた「招きカネゴン」に引かれて入店してくれたようだ。
しめしめ、オヤジの作戦成功であります。

しかし時おり漏れ聞こえる会話に、「盗む」「持っていっちゃう」という聞き捨てならないセリフがまじっているのは穏やかでない。
一組、また一組とお客様がお帰りになり、彼女たちのサワーを追加する声が大きく聞こえる。
あらためて二人を見ると、どことなく誰かに似ている。
はて、誰だろう?
一人がトイレに立つ、思ったより背が高い。
それでわかった。
女漫才コンビの「北陽」だ。
背が高い娘が「虻ちゃん」似で、低い方は「なんとかちゃん」似だ。
そう考えると、本当に似て見えるのが不思議だ。

10時半をすぎ、店内は「北陽」の二人だけになった。
「虻ちゃん」が待ちきれないように口を開いた。
「あのカネゴンて、売っているんですか?」
いえいえ、もう販売はしていないでしょうね。
オークションには出ているかもしれませんが。
あれは9年ほど前に、「M1号」が金型を起こし、限定販売をした店頭展示用のブルマークタイプの「カネゴン」で、硬質ソフビ製の・・・、あ、こんな詳細はどうでもいい?
こらまた失礼。
「ピグモンはないんですか?」と「虻ちゃん」。
「いくらするんですか?」「ずっと表に立っているんですか?」「いたずらされないんですか?」と、たて続けの質問。
お話の確信に迫ってきたぞ。

彼女たち、店頭の「カネゴン」が可愛いので、抱っこして持っていっちゃおうかと話し合っていたということ。
ほほう、持てるものなら持ってもらおうじゃないか。
「試しに持ってごらん」というと、「虻ちゃん」腕まくりもので「カネゴン」に抱きついた。
“うんしょ”と力んで抱えると、ちょっとよろけ、その重量を実感したようだ。
「ね、そんな格好で歩いていたら、おまわりさんに職務質問されちゃうでしょ」
といえば、「すぐ車にのせちゃったら」と、尚も“かどわかし”の夢が捨てきれないらしい。
「そいつは数が少ないし、すぐ足がついちゃうよ」
といってやると、二人で顔を見合わせ「だよね」と納得した様子。

「最後にもう一杯ずつ飲んでいいですか?」というので、サワーを作ってもっていくと、「カネゴン」を抱っこしたことで気をよくしたのか、「マスターとおかあさんも飲んでくださいよぅ」といってくれた。
みんなで乾杯をすると、二人は自分たちの話をしだした。
それによると、二人は派遣社員で、背の低い方の娘は千住が勤務地だそうで、たまたま今日は「虻ちゃん」と落ち合い、お好み焼好きの彼女の希望で、前から気になっていた「カネゴン」の店に来てくれたというわけだ。
「招きカネゴン」のご利益ありですな。

幸い「北陽」コンビの「カネゴン強奪計画」は未然に防がれたが、「ケンタッキー」おじさんの例もあることだし、これからも安心してはいられないかもしれない。
だけど、夜闇に乗じても、「カネゴン」を抱えてもっていくのはけっこうしんどいと思うし、目立つだろう。
それよりも、我が子を盗られたオヤジの追跡は、執拗で情け容赦ないのである。
火傷するまえにやめときな、ベイビー!!

10:42:00 | mogmas | | TrackBacks