July 01, 2006

X線母子

   
ばあさんが腰が痛いといい出したのは1週間前。
医者に行こうというのを、「寝てれば治る」と言い張る。
温湿布を買ってきてほしいとたのまれ、3、4日それで様子を見ていたが、どうやらガマンできない痛みらしい。
ようやく医者へ行くつもりになった。

オヤジが肋骨を強打して苦しんだのも約1週間前。
こんなもの湿布してほっときゃ治ると、タカをくくって様子をみていたが、木曜日の朝から痛みがひどくなり、立っていても寝ていてもズキズキと疼き、生ビールの樽が持てない、鉄板の掃除ができないと、仕事にも差し支える有様。
どうにもこうにも耐えられなくて、しかたなく10時で閉店した。
どうせ医者へ行っても、「湿布して安静にして、1ヶ月ほど様子を見てください」言われるにちがいないのだ。
それでも医者へ行く気になったのは、痛み止めを処方してもらえるからだ。

カラッと晴れた金曜日の午後、ばあさんと連れたって近所の病院へ出かけた。
午後の診察は整形外科の外来だけで、待合室にはじいさん、ばあさんばかり。
待つことしばし、名前を呼ばれてばあさんと共に診察室へ入り、おざなりの問診を受け、レントゲン写真を撮ることになった。
前々から思っていることだが、レントゲン技師っていいよなぁ。
指揮者がオーケストラを自在に操るが如く、患者を意のままにあっち向かせ、こっち向かせ、息を吸わせ、止めさせ、モデルの撮影をするカメラマン同様に素敵だ。
もしも生まれ変わったら、絶対レントゲン技師になろう。
しかもファンキーで、クレイジーで、サイコなレントゲン技師がいいな。
だが、この病院の若いレントゲン技師は真面目そうで、ジョークのかけらもなく仕事をこなすのだった。

医者嫌いの強情母子は、続けて写真を撮られ、再び診察室へ。
レントゲン写真を見ながら医者が言うには、ばあさんは老人によくある「骨粗鬆症」のため、骨が脆くなっているようで、痛い部分の背骨にそれがでているという。
打撲や捻ったりというのではないので、湿布と痛み止めで様子を見るほかないらしい。
一方オヤジは、骨には異常はなく、レントゲンに映らない軟骨にヒビが入っているのだそうな。
それが、動くたびに痛い原因だそうだ。
治療法は、湿布を当ててサポーターで固定して、安静にすること。(ほうらね、これしかないのさ)
あとで変な誤解が生じるといけないので、「先生、別に親子喧嘩してこうなったわけじゃありませんから」というと、医者は苦笑まじりに「わかってます」とニヤニヤした。

家に帰ってさっそく鎮痛剤を服用、新しい湿布を当て、胸用のサポーターをキリリと巻いて、いざ出陣でござる。
本日は予約のお客様が2階席にいらっしゃる。
痛くてだめだなどとは言ってられないのだ。
仕事が終わったら「最後の砦」で、傷ついた胸の軟骨をいたわりながら、軟骨を3本ほど焼いてもらおう。
そして内側からも消毒をするのだ。

ところがどっこい、6月最後の金曜日は、おかげさまでとても忙しく、週末ドランカーの「ヒトリモン」をはじめ、スコットランドの「ジョニー」さんと「ヒカル」ちゃん、「バーバーくん」と「ナノくん&ヨーコちゃん」、「トツカ」くんとおなじみさんも勢揃い、ヒイヒイ言いながら一段落したのは11時を過ぎ、例によって「ヒトリモン」はブルートレイン並みに揺れながら就寝、片付けを全部終わったのが1時半過ぎ、いい塩梅に寝て起きた「ヒトリモン」は、途中まで一緒に行ったが、全日本千鳥足選手権の予行練習とばかりに久しぶりに1人で歩いて帰れた。
もはや「最後の砦」も閉店だ、残念。

仕事の最中息苦しかったのは胸のサポーターのせいだ。
外した途端にホッとした。
Cカップ以上の女性の気持ちがわかる。
キツく締めたサポーターのあとが、ミミズ腫れになっていた。
明日は今日より少しはマシであることを願い、そっと仰向けで眠りについた。

16:21:33 | mogmas | | TrackBacks

カリカリする人

  

バイクで仕入れに行く途中、4号線を右折車線へ入り、停止線のところで停まっている白いセルシオの脇をすり抜けようとしたら、急にそのセルシオが前進し、行くてを遮るように塞いだ。
おいおい、危ないなぁと思って運転席を見れば、ものすごい形相で“ガン”を飛ばしている金縁眼鏡の男性と目が合った。
堀内孝雄を2、3発殴り、靴で踏みつけたような顔をしているその人は、吹けば飛ぶようなバイクが、自分の愛車の前に出るのがお気に召さないらしい。

朝っぱらから威勢のいいことだ。
こういう手合いは無視するのに限るが、なおもこちらを睨みつけている。
その因業な顔を見ていたら、なぜか笑いがこみ上げてきて、プッと噴き出してしまった。
「堀内ガチャ雄」氏、それを見てさらに切れたか、ウインドーの向こうで何事か怒鳴り始めた。
そういう時の口の動きはわかりやすいもので、読心術者じゃなくても何を言っているかはわかる。
「てめぇ!こら!おちょくってんのか!・・・・」
こういう方々の常套句である。

ほらほら、熱くなっていると信号の変わり目に乗り遅れますよ。
実はオヤジはこの交差点を、Uターンして目的の場所へ行くのがコースになっている。
ちょっとバイクを前進させると、怒鳴っていた「堀内ガチャ雄」氏、慌てて車を発進させた。
そしてなんと右折ではなく、Uターンしだした。
しかし小回りのきくバイクは、すぐに車の先頭に立ち、追い抜きそうだ。
真横に並んだ車のウインドー越しに、「堀内ガチャ雄」氏はこめかみに青筋立てんばかりの勢いで、「このヤロウ!なめてんのか!しまいにゃ殺すぞ!」と物騒なセリフをがなり立てている模様。
そんなに熱くなっているのなら、窓を開けて怒鳴ればいいのに。
すると、またまた笑いの衝動が襲ってきて、プッ、ハハハハッとやってしまった。

これには「堀内ガチャ雄」氏ブチ切れ、アクセルを猛然と踏み込んだ。
「ブゥオロロロロ〜〜〜ン!!!」と加速したセルシオは、あっという間にバイクをかすめるようにして真ん中の車線に突入し、疾走する。
ああ、残念、競争できなくでごめんね。
オヤジは一番左の車線に移動、すぐに左折するのでありました。
朝も早よから、元気な人だなぁ。
あんなにカリカリするなんて、きっとカルシウム不足なんだろう。
気をつけてねー、死に急ぐなよー。

10:12:00 | mogmas | | TrackBacks