July 18, 2006

手づかみカレーの会

   
朝からモグランポの店内には強いスパイスの匂いがただよい、シコシコと仕込を続けるオヤジの髪の毛にも、その香りが染み込むのだった。
この夜8時に、第2回「手づかみカレーの会」が開催されるのである。
この日のために、インディカ米の炊き方を練習し、サフランライスについて調べ、ナンとチャパティーをこね、スパイスを調合して「マサラ」を作り、用意万端でことにのぞもうと、いささかあせっているのであった。
しかし「アーユルベータ」の教えは、急がず騒がず、臨機応変にせよと、カレーをかき回すオヤジに訓をたれるのである。
朝から何も食べていないオヤジは、強い香辛料の匂いに腹がグーグーなるが、味見が出来る時まではお預けと、ガマンするのだった。
導師「ヒトリモン・ナンダ・センセーイ」から借りたインド家庭料理の本を読むと、些末なことにこだわらず、大らかにガンガン強火でカレーを煮込めと書いてある。
あらゆる自然の摂理に柔軟に対処するのは「アーユルベータ」の教えの一つなのだろう。

本日のオヤジカレーは、
画像の表示ナスと鶏肉のカレーだ。
ナスと鶏肉(骨付き手羽元)にはターメリックと塩・胡椒がまぶしてある。
他に、ココナッツミルクとホールトマト、マンゴーチャツネ、ニンニク、生姜、タマネギ、ヨーグルトと、一週間寝かせて熟成させたスパイス。
水や小麦粉は使わず、人工のモノも一切加えない、自然のものだけで煮込んだカレーであります。
これだけでは足りないおそれがあるので、事前に導師「ヒトリモン・ナンダ・センセーイ」が入手したインド直輸入の、添加物が一切入っていないレトルトカレー3種、豆、ホーレンソウ、カッテージチーズのカレーも用意し、最高級インディカ米の白飯とサフランライス、鉄板で焼くナンと、チャパティーも用意した。

午後9時近くに、ようやく「手づかみカレーの会」は、始まった。
メンバーは、導師「ヒトリモン・ナンダ・センセーイ」を筆頭に、「おちょこくん」夫婦と、第1回目も参加したAさん、初参加の「クロダくん」と、小僧を含めた総勢8人。
小道具にもこだわる導師は、「ギー」を入れた小さな器に火をつけ雰囲気を高め、邪気を払い、まあてきとうにビールを飲み、バナナの葉っぱのお皿と、インド料理店で出てくるステンレスの器にカレーとご飯を盛りつけた。
画像の表示これはもう「ナマステ」でしょう。
しかし、うまいこと焼き上がったナンと、ようやくいい感じて膨らんだチャパティーを、熱い鉄板の上にのせて放っておいたおかげで、パリパリのカチカチに硬くなってしまい、インド人も“ビックリ”のしょうもないことになってしまった。
気をとり直して、ご飯にカレーをかけ、導師「ヒトリモン・ナンダ・センセーイ」の作法を真似て、一同熱いのをガマンして混ぜ混ぜし、口の中へホイッ。
今回は辛いの苦手な人のために、オヤジカレーはそんなに辛くしていない。
なので、火を噴きたい人には、辛口のガラムマサラを直接たらして辛みを調節してもらった。
やはりカレーは食欲をそそる。画像の表示

何も知らない人が見たら、ここは何屋だ ? と固まってしまいそうな光景がひとしきり展開した。
全員無口になり、一心にご飯とカレーを混ぜ、口にポイッ、という行為を繰り返し、ナンもチャパティーも片手でちぎって食べる。
インディカ米が体内で膨張するのか、パクパク食べていると急に満腹感に襲われた。
普段スプーンで食べる時よりも、手の方が量を食べられてしまうのだろうか ?
これではあとが続かないので、本日の隠れメニュー、導師「ヒトリモン・ナンダ・センセーイ」の“シジュウクサイ”の誕生日祝いを執り行なうのである。
画像の表示羞恥心などもはや無いのだ。
いくつになっても、ハッピーバースデーはいいでしょう。
しかし、これだけでは終わらない。
せっかく辛いもので新陳代謝を上げたというのに、導師「ヒトリモン・ナンダ・センセーイ」は島の行商人の本領を発揮し、デカイ発砲スチロールの箱に入れた沖縄の激ウマ「ブルーシールのサトウキビアイス」を、なんと4kgも搬入してあったのだ。
しかも、Aさんからも泡盛「群青」と一口サイズの饅頭の差し入れもあり、別腹は婦女子ばかりではないとばかりに、食べまくり飲みまくった。
結果、全員腹を抱えて“クルチィ”とつぶやくのであった。

インドの人が食事のときに右手ばかりを使い、左手は不浄で使わないというのは、必ずしもそうではないらしい。
世界の人の食文化には、厳格なきまりもあるが、大らかな自由さももちろんあって、いずれにしても生きるための、楽しむための、コミュニケーションをとるための重要な役目があるのだ。
日本のインド料理店ではたぶん出来ないだろう本場の食べ方を堪能できて、今回もいろいろと学ぶところがあった。
フランス生まれでイタリア育ちの「欧風カレー」好きなオヤジだが、インドのカレーというのがどういうものなのか、少しだけわかったような気になった。

第三回の「手づかみカレーの会」は未定だが、手で食べるということはなかなか面白く、カレー以外にもいろいろとやってみるのもいいかもしれない。
ラーメンとか、納豆とか、牛丼とか、ステーキなんぞも手と口で引きちぎりながら食べるとよりワイルドで、狩猟民族の気持ちになれるかもしれない。
お箸の国の人だけど、たまにはこういうことをやってみてもいいんじゃないかな。



11:07:00 | mogmas | | TrackBacks