October 17, 2007

おかん・・・

  
「おかん」といっても、かあちゃんのことでも、死体を入れる棺のことでもない。

漢字というものは実に的確に状態を言い表し、ただの寒気ではなく、身体の内側から這い上がる気持ちの悪いゾクゾク感を「悪寒」という。

不機嫌な一夜が明け、身体はだるく、頭は重く、四肢に力がなく、まったくシマラナイただの木偶の坊は、それでも店に仕込みに出かけた。
すべての体力を使い果たし、唇は乾き、ノドは渇き、アイスコーヒーを2杯イッキ飲みした直後、この「悪寒」がこの身に襲いかかった。
顔は火照っているのに身体は鳥肌がたつほど冷たい。
こんな感じは何十年ぶりだ。
たぶん世間ではこういう状態を「風邪」というのだ。
運よく何十年もこんな状態に出くわさなかった。
覚えているのは、19歳の時と30代のときの2回だけ。
40度を超える熱が出て、フワフワとしたハイな状態が逆になんだか気持ちがよかった。

歯の根がガチガチいいそうな「悪寒」に震えながら、極度の肩こりと不機嫌な原因の一つはコイツだったかと考え、薬をユンケル皇帝液で流し込み、氷まくらをして夕方4時過ぎまでがっつり寝た。
空きっ腹では戦にならぬと卵かけご飯をかっ込み、急いで店に行って15分遅れで開店した。
しばらくして、吐き気と腹痛が襲いかかり、人がいないのを幸いウンウン脂汗を流して堪えていると、頭痛までやってきやがった。
それでもくしゃみと咳が出なかったので、10時まで営業を続けた。

11時前に店を閉め、駅の方へ歩いていくと、通り過ぎる人々の吐く息、飲み屋から漂ってくる酒の匂いに吐き気がつのるのを感じた。
酒そのものの匂いではなく、一度人の体内へ入って出てきた息の臭いに耐えられなほど敏感になっている。
酒を飲まないかあちゃんですら気にならないような微かな臭いがわかる。
通り過ぎるご機嫌ちゃんの人々の吐く息が、テンションの下がりきった蟒蛇オヤジを打ちのめす。
「毎日その臭いを、わたしは嗅いでいるんだよ」
かあちゃんに諭される。
ただただ「ごめんなさい」というしかないダメダメオヤジは、吐き気を堪えて自宅に帰り着いた。

それでも熱は出なかった。
いっそ高熱を発してくれた方が楽にもなるし諦めもつくのに・・・。
脇の下のすぐ下、リンパ線がきているところの肋骨が触れるだけで痛い。
湿布を張って、倒れこむように寝た。
しかし眠りは浅く、2時間おきに目が覚め、気持ちの悪い汗をかき、まんじりともせず夜が明けた。
気分は悪い。(不機嫌を通り越していた)

臭いと音に過敏になっていて、熱いのに寒い身体を持て余し、浅い眠りをむさぼった。
腹がグーグー鳴って、食欲が戻ってきたことを知らせる。
かあちゃんが熱いうどんを作ってくれたので、それを喰らい、薬を流し込み、次に目が覚めた時は暗くなっていた。

そういうわけで、店主の決断のないまま店を臨時休業させていただいた。
申し訳ございません。

夜、ニラやネギがたくさん入ったワタリガニのエキスが出た鍋を、大根おろしにニンニクをたっぷり入れて食べた。
爆睡した本日、なんとか状態はよくなってきました。
この貴重な定休日をゆっくり過ごして、体力と栄養をつければ、木曜日は平常通り営業できるでありましょう。

それにしても、どこから風邪の菌を貰ったのだろう ?
普段なら、小僧がどこからか貰ってきて、かあちゃんにうつり、その間に万全の態勢を整えたオヤジは風邪をシャットアウトしているのだが、いきなり本丸から崩されるなんて・・・。
しかも数十年なかったひどい状態の風邪だ。
不機嫌な弱り目に祟り目は、はたしてどこからもたらされたのだろう ?

いたっ !!
風邪気味だという男が。
「バーバーくん」だ !!
あの男、宇宙人の頑強さで大事には至らなかったようだが、ピンポイントでオヤジに宇宙風邪をうつすことで完治したのかもしれない。
強力な宇宙風邪には、さしもの反省期の蟒蛇もイチコロだ。
しかし、もう大丈夫。
甲殻類の苦手な「バーバー星人」の菌には、ワタリガニのエキスが効いた鍋で対抗できるハズだ。
宇宙風邪にはエビ、カニで決まりだね。
みたか「バーバー星人」、地球にはお前達の侵略を阻止する甲殻類が生息しているのだ。
ワッハッハ、宇宙の秩序と正義は守られた。

ただ一時的にお酒の臭いがダメになって、バッカスの神よお許し下さい。
今後ともお酒呑みを精進致しますです、ハイ。

09:23:15 | mogmas | | TrackBacks