October 30, 2007

反省期のサプライズ

  
頭が割れるように痛くて目が覚めた。

生ける屍、木偶の坊、阿呆丸出しで、パジャマをズルズル引きずってトイレと寝床を往復するこ3、4回。

ようやく思考停止状態から脱したときは、家には誰もおらず、陽が高々と差し込む正午だった。

こんなしょうもない反省期のオヤジを、昨夜は常連さん達がお祝いしてくれた。

続々と集まってきたお馴染みの顔を見て、何かやらかしてくれるんだなとは思っていたが、鉄板に向かって焼いている時に、いきなり全員からクラッカーのシャワーを浴びせられるとは思わなかったので、いささかびっくりした。
みんな密かに連絡を取り合って、オヤジを驚かせようと企んでいたようだ。
かあちゃんも一緒になってこの企てに荷担し、店主に断りもなく入口に「本日貸切にて候」と張られ、店は宇宙人と蟒蛇と魔法使いの巣窟と化してしまった。

恥ずかしながら50年も生きながらえてしまったオヤジに、みんなあと半分生きよとメッセージをくれるが、100歳まで生きたら妖怪になってしまうぞよ、ワシは。
それに、若いみんなが次々と先に逝くのを見て、何度も涙しなくてはならんじゃないか。
でもまあしかし、少なくともあと20年は生きて、旨酒を酌もうぞ。

シャンパンやワインや焼酎をたくさん頂いた。
本やCDやDVDもいっぱい頂いた。
思い思いの励ましのメッセージや写真も頂いた。
ケーキのローソクも吹き消した。
こんなに祝っていただいたことはかつてなかった。
手が震えるほど空腹だったが、どんどん飲んだ。
全部の酒を開けた。
最高の反省期祭りだった。
モグランポを続けていて、ほんとうによかった。

ありがとう「タケちゃん」
あのうるさいモノ知らずな先輩がいなくなったら、今度は君が先輩になる番だ。
技術を磨いて、そのうち禿げたらオヤジの頭も磨いてくれ。

ありがとう「シゲちゃん」
バーバーなき後は、オヤジのケン・ワタナベ似の京都の老舗の和菓子屋の若旦那風頭は君の腕にかかっている。
くれぐれも「レッツゴー ジュン」みたいなモミアゲだけは勘弁してね。

ありがとう「Aさん」
あなたは、オフザケな夜の良心です。
でももっとハジけてもいいんじゃないかな。

ありがとう「ポッターくん」
いろんな出会いが君の栄養になるはずだ。
空気を読んで、タッチ&ゴーで突っ込め !

ありがとう「サバ兄」
君の反省期には何を贈ろうかね。
鯖の塩焼定食で乾杯かよっ !!

ありがとう「ユカ&阿蘇山」
地理の勉強をしましょうね。
ぜひっっ !!

ありがとう「ジョニー&ヒカルちゃん」
いつも授業料なしで勉強させてもらっています。
いつかスコットランドに行ってみたいな。
その時は、お二人の結婚式、かいな ?

ありがとう「Cちゃんご夫妻」
ケンカするほど仲がいい、酔えば酔うほど面白い、まさに夫婦善哉やなぁ。
旦那さんの云う通り、寝袋は用意させてもらいますさかい、安心して酔いなはれ。
それもこれもみんな芸のためや。
ええぃ、酒だ、酒だ、生ビールもってこんかい !
へぇぇぇぃ、おまっとうさんですぅ。

ありがとう「ヨウコ」
なんの因果か居候。
写メはやめんか居候。
早寝早起き居候。
ああ言やこう云う居候。
早く嫁に行って恩返ししろ居候。

ありがとう「ハーバーくん」
君はほんとにムードメーカーで、調子コキのただの色男だが、メタボだ。
眉毛をハの字にして「まいった」小芝居はやめてくれ。
酔ったことが一回もないなどと言いつつ、人の顔の前で屁をこくのは勘弁してくれ。
たまにはオヤジを酔わしてから沈没してくれ。
出世払いをあと50年も待てそうにないから、今度の給料でシビレさせてくれ。

そして、ありがとう「ヒトリモン」先生
あと10年経ったら、そろいの赤いチャンチャンコ着て半ズボンで、鼻をすすりながら梨でも齧ろう。
でもその前に、
笑っちゃえよ。
すべて笑っちゃえよ。
笑って笑い飛ばして、いい酒飲もうや。
「人生いろいろ」ってアンタの口癖だったじゃないか。
筋金入りのエアグラスは、誰もマネが出来ませんて。
エスコート代がたまってるんだから、ネタぐらい提供してもらわんとね。
笑え、「ヒトリモン」。


拓郎の「永遠の嘘をついてくれ」を聴きながら、ポロポロ涙を流す昼下がりの反省期オヤジ。
感謝の念が極まって、鼻水をたらし、笑っちゃうほどオセンチな初老のオヤジ。


しかぁし・・・・・、その時事件はおこった !!!


オヤジのグタグタな気分を吹っ飛ばす、1本の電話。
それは店のお隣の佐藤さんのご主人からだった。

「お宅の店からヘンな、焦げ臭いニオイがするんだけど、もう1時間くらい前から。ちょっと心配だから見にきてよ」

オヤジの頭からサッと血の気が引いた。

不審火、出火、か  じ  っっっ !!??


グタグタなオヤジのかわりに、さっきまでかあちゃんが仕込みで店に行っていたのだ。
「かあちゃん !!」
慌ただしく着替えながらかあちゃんに状況を聞くが、ラチがあかない。
バッグを首からさげ、自転車に股がると、全力疾走。
ここ何十年も出したことのないフルスピードで自転車を漕ぐ。
アドレナリン全開、毛穴全開、瞳孔全開、しっかりせんかい。

汗だくで店に到着すると、佐藤さんのご主人が心配そうな顔で頭を下げる。
挨拶もそこそこ入口の鍵を開け、戸を開くともあもあ・・・、黒い煙と火事特有のいや〜な臭いがいっせいに顔を打つ。
最悪の事態に対処する方策を全力疾走しながら考えてきたが、まずは店の中に踏み込み、火元の確認だ。

原因はすぐにわかった。
画像の表示
ご飯を炊いていた鍋の火がつけっぱなしになっていたのだ。
黒焦げの炭化した哀れな米の固まりが、プスプスいぶっていや〜な臭いを発している。
弱火になっていたので事なきを得たが、それでもあと数十分もたっていたらどうなったかわからない。
黒煙に目をしばたき咳き込みながら、額から流れ落ちる汗を拭った。
全力疾走したノドに煙がヒリヒリする。
知らせてくださった佐藤さんに頭を下げ、原因を説明し、お引き取り願った。

かあちゃんに電話した。
「おまえ、ご飯炊いていたのを忘れたろ ? 」
「ハッ・・・・・・・・」
絶句したかあちゃんに、直ちに来い、途中で佐藤さんへのお詫びの品を何か買って来いと言って電話を切った。
汗が次から次へ流れ落ち、息が上がったまま、換気扇を回し、窓という窓を開け、煙を外へ追い出そうとした。
頭痛はどこかへ飛んでいき、アドレナリンの抜けた身体はヘナヘナだ。
やがて青ざめた顔でやって来たかあちゃんと、佐藤さんの家へあらためてお詫びに伺い、消臭剤を買ってきて店中に振りまいた。

反省期祭りのあとにほんとうの反省じゃ、シャレになんないだろうが・・・。
それでも大人のオヤジは、かあちゃんを怒鳴りつけて追い込むような事はしなかった。
もともとオヤジがグダグダの酔っ払いで、仕込みに来れなかったのがいけないのだ。
無事ですんだのだから、これを教訓に、しかも笑いに変えて、ネタにしようと考えることにした。

でもほんと、毎日毎日ネタあり過ぎ。
書ききれませんて。
もう、身体が心が温泉を欲してるぜぃ。
だれか千住に温泉掘ってくれぃぃぃぃ。

10:03:00 | mogmas | | TrackBacks