April 10, 2007

大王のミリーシャスな夜


シトシト春の雨が降る夜、ついに噂の「大王」がご来店した。
「大王」ははるばるスコットランドから、極東のちっぽけな島国を視察にいらしたのだ。
下僕の「バーバーくん」を従え上野で花見をし、秋葉原で「ジョーバ」に跨がり、鎌倉で大仏と対面し、ディズニーランドで遊んだのち、この場末のお好み焼き屋にも足を向けてくれたのだった。
弟君の「ジョニーさん」と、頼もしく可愛い通訳の(可愛いは本人の希望である)「ヒカルちゃん」と共に、新妻「アシュリン」姫を伴って現れた「大王」は、ブルース・ウィルス似で(というと本人もその気になっていた)マッターホルンのような高い鼻をもった大男であった。

幸か不幸かゴールデンタイムの涙雨で、モグランポは貸し切り状態。
やがて「ヒトリモン」先生と下僕「バーバーくん」も馳せ参じ、カウンターはインターナショナルにヒートアップするのであった。

弟君の「ジョニーさん」と違い、ダークサイドに足を踏み入れるほどお酒を嗜むという「大王」は、桝を受け皿にしたコップ酒を呑むのに、高い鼻が邪魔をして手こずるもペロリと飲干し、続いて生ビール、焼酎とこなしてゆく。
しかし一番好きなのはビールのようで、日本の4大メーカーのビールは全部試したという。

新妻「アシュリン」姫はアイルランドの人で、おいしいものを食べたときの「デリーシャス」のさらに上をいく「ミリーシャス」という言葉を考案して普及させようとしている。
ジャパニーズなフードはだいたい大丈夫のようだが、モツはその部位を聞くと「ワァォ」と言って顔をしかめ、「ミリーシャス」とはいかずお気に召さないようだった。
お口直しにお好み焼を食べていただくと、ようやく「ミリーシャス」と笑顔が出た。

この日のために、花も嵐も踏み越えて自宅から持ってきた愛刀「菊一文字」を見せ、「修行中」と書かれた鉢巻と、大事な部分に「秘密兵器」と書かれた白いふんどしを
プレゼントすると、「大王」大喜びで早速鉢巻をし、ズボンの上からふんどしを着けて刀を構えてポーズをとった。

大王修行中
大王修行中 posted by (C)084-jan

ジャパニーズ的にはおマヌケな恰好ではあるが、陽気な外国人はへっちゃらだ。
もちろん人に勧めるくらいだから、オヤジもこの日は赤ふんを締めていたのだ。
で、「おまえはジェダイマスターか ? 」と問われれば、
「イエス ワタシハジェダイマスター オビ・ワン・ケーノビナイ バット シカシソノジッタイハ ダークサイドニクビマデツカッテイル シスデアル ココニイル “ヒトリモン”モ“バーバー”モスデニアンコクメンニオチテイルノダ」
と、華麗なる日本語でよどみなく答え、世界のスター「トシロウミフネ」ばりの刀の構え方を指導した。
調子に乗って、「アシュリン」姫をトリコにしたのは「大王」の「シークレット・ウェポン」のおかげかと、恥ずかしがる“可愛い通訳”「ヒカルちゃん」に伝えてもらうと、破顔一笑「イエース !! 」と答えるノリの良さ。 

写真を撮りまくり、みんなで寄せ書きを書いた。
「大王」の正式名称は「アレクサンダー」、だから必然的に「大王」というニックネームをつけさせていただいたという訳だ。
普段は「サンディ」と可愛く呼ぶ。
寄せ書きにはひらがなで「さんでぃ」と書いてもらい、「アシュリン」姫にはその横に「つま」と書いてもらった。

寄せ書き
寄せ書き posted by (C)084-jan

これが遠くスコットランドまで行くと思うと、ちょいと驚きですな。
良識ある英国人がこれを見て憤慨し、日本との摩擦にならなけりゃいいが・・・。
ともあれにこやかに宴はお開きになり、明日始業式という「ヒトリモン」先生は帰り、「大王」ご一行と下僕の「バーバーくん」はカラオケへなだれ込むのである。

片付けをしているところへお呼びのメールがあり、カラオケ屋へ出向くと、普段おとなしい「ジョニーさん」が、椅子の上に立ち上がり“ロックンロールの神様”「チャック・ベリー」の名曲「ジョニー・B・グッド」を自分のテーマ曲のようにノリノリで歌っていた。
サビの部分へさしかかると、「大王」も声を張り上げ
♪ Go! Go! Go, Johnny, go! Go! Go, Johnny, go! Go! ♪
とスコットランド版「狩人」のように兄弟で熱唱するのであった。
オヤジも思わずエアギターでライトハンド奏法をしてしまうのだが、いかんいかん、この浮かれた外人たちに“にっぽんの唄”を聞かせなければと、選曲したのが「望郷酒場」と「スーダラ節」。
しかし、相変わらず「修行中」の鉢巻を巻いた「大王」は、
♪ すいすい す〜だらだった すらすらすいすいすい ♪
にも難なくノってきて、調子こきまくるのであった。
オーダーの飲み物を持ってきたカラオケ屋の店員も、ニヤニヤ笑っちゃうのである。
ウルフルズで応戦する「バーバーくん」も、今夜は影が薄いのだ。
だが、一番歌がうまいのは「アシュリン」姫で、なんでもスコットランドの自宅にはカラオケの装置があるらしい。
う〜ん、さすがだ。

最後の歌は「ウイ・アー・ザ・ワールド」とスコットランド民謡「蛍の光」で締めた。
だめ押しでプリクラを撮ったが、「大王」はずぅ〜と「修行中」の鉢巻をしたままだった。

大王修行中2
大王修行中2 posted by (C)084-jan

国に帰ったら、「修行中」の鉢巻と「秘密兵器」のふんどしを自慢するのだろうか ?
ヘンな日本人の話をしてくれるのであろうか ?
楽しいひとときをセッティングしてくれた「ジョニー&ヒカル」カップルに感謝。

いつか「ネス湖」を探検しに行く機会があったら、ぜひ「大王」にもお目にかかりたいと思うのである。


15:11:46 | mogmas | | TrackBacks