April 04, 2007

カネゴン誘拐未遂 !!

  
花散しの雨がしょぼつく、夜の8時をまわった頃。
ご近所に住む奥さんが、テイクアウトの窓越しに声をかけてくれた。
「あの、いつも表に立ってる、あのおおきいの、向こうに行っちゃってますよ」
「は、?! 」

当店の表に立っているおおきいの、といえば、アイツしかいない。
急いでドアを開け、定位置を見てみると、なるほどいない。
こんな雨の中、1人でどこへ行ったというのだ。
オヤジが酒ばっかり飲んで、かまってやらないから、ついに家出したというのか ?

「ホラ、あそこに立ってる」
と、奥さんが指差す先の暗がりに、あの特徴のあるシルエットがぽつんと佇んでいる。
「おいおい、こんなとこで何してんの」
と声をかけ、抱きかかえて店まで連れ帰ると、「ヒトリモン」や「ヨウコリン」たちが何事かと心配して出向えてくれた。
知らせてくれた奥さんに礼をいい、考えてみれば、10年間でこんなことははじめてだった。

雨の日も風の日も店頭に立って、ケンタッキーおじさんよろしく、当店の看板として頑張ってくれている「カネゴン」は、知る人ぞ知る M1号の限定特注フィギアだ。
全高およそ140センチほどで、体重は4歳児より重い。
飛び出た目玉や尻尾と、平べったく左右に張ったとげのある顔は、子供らや酔っぱらいの恰好のいたずらの対象になっていたが、硬質ソフビの硬い身体は持ちにくく、予想外に重いので、10メートルも抱えて歩いたらちょっとシンドイだろう。
それに、もし表通りをこんなものを抱えて歩いていたら目立ってしょうがない。
実験はしてみたが、普通の乗用車にはとても入れ難いので、大きなスライドドアのワゴンかトラックでもなけりゃ積み込むのは難しい。
ようするに、誘拐するのはけっこう大変だということだ。

それが10年目にしてはじめて、およそ10メートルほども連れ去られていた。
当店に来た当初のように、鎖にでも繋いでおくか・・・。
しかし、誘拐してもぜったい目撃者は出てくるだろうし、すぐにアシはつくと思う。
なにより、盗んだヤツが部屋の中に置いたら、邪魔くさくって始末に困るハズだ。
最近看板がいたずらされていたり、小僧の自転車が盗まれたりと、ちょっかいを出されたことが何度かあった。
そんな不届きな輩がうろついているのだろうが、見つけたらただじゃおかない。
コテで横っ面を張り飛ばして、ソースを頭からかけてやる。
覚悟せいっ !!

でももし誘拐されてしまったら、警察に電話するよりない。
「はい、110番です」
「えー、あのー、誘拐されたんですが・・・」
「え、もう一度おっしゃってください。だれが誘拐されたんですか ? 」
「えー、うちのカネゴン、なんですけど」
「カ、カネ・・・、あのですねぇ、あなたお酒を飲んでいるんじゃないですか ? 冷静に考えてください」
「いたって冷静ですよ。うちの可愛いカネゴンちゃんが、何者かにかどわかされたんだって言ってるでしょ」
「あのですねぇ、カネゴンて何者ですか ? 」
「怪獣に決まってるでしょう」
「すみませんが、警察は怪獣の誘拐には対処できないんですよ。円谷プロか、ナントカレンジャーにでも電話したらどうですか」
「なんだよ、税金泥棒 ! 怪獣だってうちの家族なんだぞ」
「あなたねぇ、これ以上しつこいと警察呼びますよ」

ハア、こうならないように、注意しなくちゃね・・・。



12:55:04 | mogmas | | TrackBacks