May 17, 2007

マテない男

  
葛西臨海水族館の学芸員というか、説明係をボランティァで務める「島の行商人」にして理科教師の「ヒトリモン」先生が、
「オレはプロだし、穴場を熟知している」
と豪語するので、ヘロヘロのお疲れの定休日を日帰り温泉三昧にしようと思っていたオヤジとかあちゃんは、天気の良い日の気分転換もいいだろうと、「ヒトリモン」の誘いに乗ってみたのだ。
彼は気象庁のHPをブックマークして、天気と潮の具合を抜かりなくチェックしており、梅雨入りの沖縄行きをキャンセルし、東京湾での漁のために学校を休んだ。
そんな気合い十分な「ヒトリモン」のランクルで、水族館は休館の葛西臨海公園に朝10時前に到着。
まだガラガラの駐車場に、長靴にサングラス、バケツとスコップをもった怪しい3人組が降り立ち、浜へ向かって歩き出した。

引き潮
引き潮 posted by (C)084-jan

漁に最適の大引の海は、そのままディズニーランドまで歩いていけそうなほどの引き潮で、砂浜には至る所に蟹穴があき、まだ荒らされていない漁場を、我々は沖合まで出て行った。

掘る
掘る posted by (C)084-jan

自信たっぷりの「ヒトリモン」、スコップで表面の砂をすくい取り、蟹穴とは違う穴を発見。

塩を振る
塩を振る posted by (C)084-jan

すかさずかあちゃんが塩を穴の中に振る。
かあちゃんは、幼少の頃から天草の海でこの漁に慣れ親しんでいたので、手順はいわれなくてもわかっているし、「ヒトリモン」よりも経験豊富だ。

つまむ
つまむ posted by (C)084-jan

待つことしばし、ヒョロッと穴から身を出した“そいつ”を、逃がすまいとつまみ、ゆっくりと穴から引き出してゆく。
力の加減をせずに強くつかむと、“そいつ”はトカゲの尻尾切りのように、体の一部を惜しげもなく切り離して穴の奥深くへ素早く逃げてしまう。

捕獲完了
捕獲完了 posted by (C)084-jan

お見事 !
マテ貝ゲット。

グロ ?
グロ ? posted by (C)084-jan

しかし、何のために生まれてきたのか、悲しくなるくらいグロなヤツ。
砂の上に置いてやると、逃げようと先端のエロイ部分をヒクヒクさせて、卑猥な動きを披露する。
思春期の少年少女には、とても見せられません。

上野の「吉池」で売ってもおかしくないくらいの大物をかあちゃんは次々に捕獲、大きなことを言っていた「ヒトリモン」は、“自分の分身かっ”という程度の小物ばかり
捕る。
マテ貝捕りが初めてのオヤジはと言えば、穴から様子を窺っているヤツを力まかせに焦ってつかんでしまうので、みんな身を切って逃げられてしまう。
「もう少し待って、ゆっくり引き上げるんだよ」
と、エラそうに言う「ヒトリモン」の忠告も聞かず、砂に潜っていくヤツより早く砂を掘り返してやればいいと、ガンガン掘りまくるが、甘かった。
あんな怪しげな形状をした貝のくせに、潜るスピードはジェットモグラのように素早く、とても追いつけないのだ。
そんなダメダメオヤジを見て、かあちゃんと「ヒトリモン」は口をそろえて
「マテない男だなぁ」
と笑うのである。

悔しいので、アサリかハマグリか、他の美味な貝を捕ってやると、砂を掘り返せば、まるまる太ったハマグリちゃんを、苦もなく発見。
これはいいと、熊手を振るい夢中で砂を掘り返し続けた。
しばらくして立ち上がり、腰をのばしてあたりを見渡せば、
「開発かいっ !! 」
というぐらいオヤジの周りの砂は掘り返され、しかし網2つ分のハマグリが捕れた。

大漁
大漁 posted by (C)084-jan

海に入って2時間。
いやぁ、すばらしい成果だ。
貝掘りは楽しい。
すっかり気分転換になった。
意気揚々とスコップとバケツを下げて、我々は浜を後にした。

食事とくつろぎをかねて、葛西臨海公園からほど近いところにある「湯処葛西」というスーパー銭湯へ向かった。
なんでも都内最大級の露天風呂だそうだ。
平日の大人料金600円を払い、新しくてなかなかきれいな湯に浸かり見渡せば、男湯の露天風呂のあちこちにグッタリした「マテ貝」を何本も発見してしまった。
なんだか切ない気持ちで、今夜はコイツで一杯だと我が身を見下ろしたのである。

6時半頃から貝パーティがはじまると、喜々として捕ってきたハマグリの正体が判明し、愕然としたオヤジは、またも全員からケチョンケチョンに馬鹿にされてしまうのであった。

悔しいから、それは次回・・・・・。




12:31:28 | mogmas | | TrackBacks