June 14, 2007

唖然としたこと

  
業務用の食材などを大量に売っている店に買い物に来た。
道路には駐車場待ちの車の列ができ、店内はショッピングカートの渋滞が出来ていた。
遠くから、イラッとするキンキンした声で子供を叱る女の声が聞こえ、だんだん近づいきた。
3歳ぐらいの男の子がカートの周りをちょこちょこ走り回り、母親らしき女はその様子を見もせず、商品を手に取りながら怒鳴っている。
女の背には、ぐったりと眠る乳飲み子が、人形のようにくくり付けられている。
女はカートを通路をふさぐように斜めに止め、次々と商品を手に取り、放り出し、周りの事なんかぜんぜん見もせず、相変わらず男の子を叱りつけている。

オヤジのカートが接近するも、女はまったく気にせず、通路をふさいだまま商品選びに余念がない。
オヤジとカートは女の前で立ち止まった。
子供は無言でそのへんでウロウロしている。
オヤジとカートも無言で待った。
商品を手に取った女は、いったん自分のカートへその商品を入れかけたが、心変わりして商品をもとの棚へ放り投げ、まったくオヤジとは目もあわさずに、くるりとカートをひるがえして、
「ほら、いくよ ! ボケッとしてないでついて来るのよ ! 」と空中へ叫んで歩き出した。
男の子は何も言わず、かといってふてくされた様子もなく、ちょこまかと女のあとを追いかけてゆく。
オヤジもボケッとしないで動き出した。
女が手に取って買わずにやめたのは、「お買い得 白菜キムチ 98円」だった。

広い店内でいろいろ買い込んでレジに行くと、先ほどの女が一足先にレジで会計をしているところだった。
男の子はというと、カートの中へ入れられて、自力で出ようともがいている。
女はノロノロと小銭をかき集めている最中で、子供のことはまったく気にしちゃいない。
男の子はカートの上に立ち上がり、片足を外へおろそうとするが、当然床まで届かないのでためらっている。
その危なっかしい状況に、早く女が気づいてくれればいいのに、女もレジのおばちゃんもまるで男の子に関心がない。
再び男の子は立ち上がり、片足をカートの外へ出した。
カートが傾く。
反射的に自分のカートを脇へどけ、男の子に手を伸ばしたのだが、それより早く、通りがかった年配の婦人が男の子を抱きとめて下へおろしてあげた。
ご婦人は男の子の頭をなでて立ち去り、女はようやく会計を済ませて振り向くが、
「なにしてんのよ ! 」
と一喝、ノロノロとレシートを仕舞い込み、レジから離れない。
男の子は何事もなかったかのように、カート置き場へカートを押していってしまう。
山のように食材を買った女は、それをカートへ乗せようとして振り向き、ようやくカートがないことに気づく。
「ちっくしょ・・・」
と小声で毒づき、うんしょとカゴを両手で抱え、がに股でレジを離れた。

会計を済ませ、商品を袋に詰める台のところまでくると、またしても女と男の子に遭遇してしまった。
「チョロチョロしない ! 」
チョロチョロしている男の子にわめき、さらにブツブツと小声で文句を言い続けている。
突然、男の子の方を振り向き様に怒声を放った。
「あんた、何の権利があってそんなことするのよ ! 」
   ええっ ・・・・!?
思わず、自分が怒られたかのようにポカンと口を開けてしまった。
なるほど、男の子にカートを片付けられてしまって、重い荷物を抱えたことがよほど腹立たしかったのか。
それにしても“何の権利”って、あんた母親じゃないのかい ?
3歳やそこらの子供に“何の権利”って、公衆の面前で怒鳴って、「恥」ってことを知らんのかい ?
「節操」とか「寛容」とか「慈悲」とか「道徳」って言葉を知らんのか !
一言いいたいのをグッと堪えて、男の子をみれば、「馬耳東風」「柳に風」「糠に釘」の風情で、「そんなことは慣れっこさ」とでもいうように、スキップして行ってしまった。
あ〜、まさに「親はあっても子は育つ」(なくても、じゃない ! )だな。
唖然として、オヤジもその店を後にしたのである。




15:07:55 | mogmas | | TrackBacks