July 12, 2007

今月のジャケ買い

  
日本酒メニューに「今月の1本」と書き入れたため、毎月なにかしら日本酒を選んでいる。
前回の信州伊奈谷の地酒「夜明け前」が終わってしまうので、新たな1本を入手した。
しかし、星の数ほどもある酒の中から、“これは ! ”という酒を選ぶのはけっこう大変だ。
雑誌や広告、人の噂などもたよりに酒屋をウロウロし、第一印象でグッときた1本を選んだ。
「天下無類之清酒 越後國古式一樽仕込 極寒造」とレトロなデザインのラベルに書いてある。

画像の表示「越後 鶴亀 純米酒」

なにはともあれ、お客様に奨めるには正しい商品知識と味を知らねばならない。
飲むのは、これは、誠実なる仕事というわけで、が、しかし、もしメチャメチャ美味くてやめられなくなったら、たんに自分へのご褒美にすぎなくなってしまう恐れがあるため、封を切るのは今しばらく控えよう。

このお酒「越後 鶴亀 純米酒」は、
使用米/精米歩合  五百万石/60%
日本酒度      +3
酸度        1.6
アミノ酸      1.4
アルコール分    14〜15%

で、料理といっしょに楽しめるお酒だそうだ。

蔵元の上原誠一郎さんは、東京芸大を出、イタリアで俳優、演出家として活動し、4代目の父上の死によって五代目の蔵元となった方。
そんな経歴の方だから、ニューヨーク・ダダのむこうを張って自らをニイガタ・ダダと呼び(注 : ダダイズム。意味は下の【 】内を参照)、あえて昨今の日本酒鑑評会の淡麗辛口礼賛をよしとしないのだろう、こんなことをHPの中で言っておられる。

『純米酒は酸味が命、アミノ酸もある程度欲しい。その上での甘辛、旨味ありだ。淡麗辛口さようなら。
単にスッキリ、飲みいいなら、お酒じゃなく軟水のお水をどうぞ、って言いたくなる。お酒でただ飲みやすい、スッキリっていうのは、なんかお酒として欠落というかイビツな感じがしてならない。
ほんとにおいしいお料理との食中酒なら、いま流行の酸味のうすっぺらな辛口清酒ではないはず。
えっ、酒の酸味は料理を壊すって。そうじゃないです。なぜって、酸味のしっかりあるお酒のほうが、幅広いお料理と合性がいいからです。つまり、酸味はお料理にたいする包容力やふところの深さみたいなもんだと思うのです。
もちろん、酸味の多いお酒には、それに拮抗する旨味、甘みも自然と備わっています。酸味ばかりでなく、日本酒にコクのある苦味も欲しい。
ひ弱な酵母の創り出す、華やかな果実臭=カプロン酸エチル系の香りばかりが、もてはやされる世の中だけど、そんな少女チックなモダン清酒ばかりが清酒じゃない』

拍手、拍手 ! まさにその通り。
オヤジの心にもわだかまっていて、言葉にできなかった要点をズバリと言ってくださった。
日本酒を注文するお客様は、みな押し並べて「辛口」とおっしゃるが、ただの流行りで口にしているような、店側もとにかく「辛口」とうたっていればよい、という風潮にも首を傾げたくなる。
日本酒はほんとうにむずかしい。
だから、モグランポでは管理できる範囲の日本酒しか置けないし、ほんのちょっと残って動かない酒は、責任上・品質上・貧乏性・ありがたく飲み干して、新しい「旨口」の酒を置くように心がけている。
本日より、「越後 鶴亀 純米酒」解禁です。

【第一次大戦ち中から戦後にかけて、チューリヒからベルリン・ケルン・パリと波及した芸術運動。既成の権威・道徳・習俗・芸術形式の一切を否定し、自発性と偶然性を尊重。なんでも芸術になりうることを証明した。略称、ダダ】


先日、「新選組」の近藤勇の焼酎漬けの話を書いたが、近藤が再起をはかって本陣とした、千葉県流山の酒造家「長岡屋」の名を冠した芋焼酎が出ていたので、これもジャケ買いしてしまった。

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しかしこの製造元は、大分県にある「藤居酒造」という蔵元 。
大分といえば麦焼酎と思いきや、黄金千貫を黒麹で仕込み、その原酒を山中深くの洞窟で貯蔵して仕上げたという、まろやかな飲み口の芋焼酎だそうな。

じつは焼酎メニューの中には「近藤勇」という麦焼酎があるのだが、NHK大河ドラマに合わせて出てきたようなイベント的なところがあって、品切れしてから久しい。
今回芋焼酎で「近藤勇」は復活です。

以上、ジャケ買いの追加メニューのお知らせでした。


10:32:00 | mogmas | | TrackBacks