August 13, 2007

鮫を飲め ! 鮫を読め !

  
反省期になる前頭葉発熱親父は、当然のように血圧も高めで、肝機能だって落ちているだろうし、不摂生ダイエットの効果は、もはや望むべくもない。
そんなオヤジをみて、通販番組大好きな油売りかあちゃんが差し出したのは、「鮫珠」という深海鮫の生肝油で、半透明の黄金色した錠剤を1日2粒飲めば、高血圧、血流の改善、免疫力を高め、心臓・肝臓にもよく、更年期障害などにも効果が期待できるという優れものの健康食品=サプリメントだった。
そういう健康食品=サプリメントとか、医者とか坊主とかを疑ってかかるのはオヤジの悪い癖だ。
ハハン、フフン、と不真面目にかあちゃんの講釈を聞いていたら、
「あんたの身体をこれだけ心配しているのに」(私が正当に受取れるアンタの保険金のためにも)と、かあちゃんは怒ってしまった。
ご大層なパンフレットには、薬ではなく食品なので安心して、飲み過ぎても大丈夫と書いてあり、「いまさら」を「これから」に変えるために試してみてくださいとうたってあったので、とりあえず飲むことにした。

うーん、深海鮫ってどんなの ?
なんでもオーストラリアの沖千メートル前後に生息しているという。
つい先日、「食品のカラクリ」という本を読んだあとでは俄に信じられないし、なんという名前の鮫かもパンフレットには書いていないが、海洋深層水の中で育った鮫の肝油は「海のダイアモンド」と呼ばれるそうな。
それをオーストラリアの契約漁師が獲っているんだそうな。
ま、鮫たちは人間様より歴史が長いし、恐竜すらかなわない生命力をもっていたから今日まで変わらない形態で生き延びているのだし、そんな海の食物連鎖の頂点みたいなヤツの肝を飲むというのは満更気分が悪くない。
それに、オヤジが死んだら火葬などせず、水葬にして鮫に喰わせてもらいたいなんて思っていることでもあるから、今のところ肝油は飲み続けている。

それでちょっと思った。
警視庁新宿署の鮫島警部に痛めつけられているヤクザどもは、どうにも我慢がならないが報復することもできず、しかし身の不摂生がたたって、酒も控えめという体たらくで、悔しさ余って「鮫珠」を飲むのだ。
その際、
「この鮫の野郎、てめえを飲み込んでやる」
と景気つける。
ささやかな鮫への報復で健康も手にできて、一石二鳥の健康ヤクザの出来上がりでござい。
新宿鮫もこれには苦笑いとな。


なんてことを思っていたら、本屋さんに例の本が平積みされていた。
ちょっと前に「宇宙人ジョーンズ」から、
「オマエはあの鮫の話を知っているか ? 」
と訊かれ、
「え、もう新しい話が出てるんだ ? 」
と答えたら、
「オマエは地球人のくせに、大沢在昌のファンでも、新宿鮫のファンでもないな。顔を洗って出直してこい」
と一刀両断されてしまった。
だから、その平積みされている1冊を迷わず手に取りお買い上げした。
「小説 こちら葛飾区亀有公園前派出所」という本だ。

日本推理作家協会監修で、言わずと知れた「両津勘吉」と「こち亀」ワールドを絶妙にあしらった、7人の売れっ子作家の競作集。
そのトツプバッターが、日本推理作家協会理事長の大沢在昌の「幼な馴染み」という一編なのだ。
「こち亀」ファンも新宿鮫ファンも、ニヤッとすること受け合い。
こういう試みは大好きだ。
大沢在昌以下、石田衣良、今野敏、柴田よしき、京極夏彦、逢阪剛、東野圭吾という錚々たる一流の書き手が「こち亀」で、自らのキャラを惜しげもなく出した「お遊び」はとても面白い。
残念なのは、とても手軽に読めてしまって、もう少し長い話に浸りたいと願ってしまうことだ。
しかし、30年間休みなく続いてる「こち亀」も、このくらいの軽妙な長さのお話だからいいのだ。

これらの作品の初出誌は、「週刊プレイボーイ」だそうだ。
きっと孤独な「宇宙人ジョーンズ」は、今夜のおかずも兼ねてプレイボーイを買ったに違いない。
そしてオヤジを出し抜こうと知恵をつけたのだろう。
フン、アンタもそろそろ鮫を飲んだ方がよくないか ?
エエカッコしいしてても、細かい字を読むときの仕草は「初老」ですがな。
ん、それも地球人になりすます演技だったりして。
オヤジにトランスフォーマーかよっ !!

10:19:00 | mogmas | | TrackBacks