September 22, 2007

ランクル頂き !


「アンタねぇ、もうすでに記憶は無いんだから、これでやめときなよ」
「何言ってんだ。オレはぜんぜん大丈夫だし、ほら、あともうこれだけだし。なんか文句あんのか」
泡盛の一升瓶を掲げて「ヒトリモン」先生がトロッとした目つきでオヤジを見た。
たしかに、44度の泡盛、神村酒造の「守禮」は残りあと僅かで、それっぱかしを残しては呑んべいの沽券にかかわろうてもんだとも思えた。
だか酔っぱらいは甘やかしてはいけないということは、自らの体験上もわかっているので、
「飲んだっていいけど、沈黙したり舟を漕いだりしたら氷をシャツの中に入れるぞ」
と言うと、
「いいよ。やってみろ。どうせお前だって飲むだろうが」
と、あくまで強気な反省期の男。
「ああ、飲むよ。記憶の無いヤツに全部飲ませたらもったいないだろうが」
「記憶はあるに決まってんだろうが。ぜーんぶ覚えてるもんねー」
「よし、わかった。明日素面の時に今夜のことを聞くけど、覚えてなかったら、アンタどう始末つけるっちゅうんだ」
「覚えてないわけが無いだろうが。いいよ。じゃあ、記憶を無くしていたら、オレのランクルくれてやらぁ」
「ほんとだな。よーし、やったあ。ランクルランクルいっただき〜だ」

「ヒトリモン」先生は毎日通勤でランクルに乗っている。
その最高級のランクルを、お馬鹿なことにオヤジにくれるというのだ。
酔っぱらう前に聞いた話では、10数年ぶりにランクルの新型が発表され、ディーラーから試乗会の案内がきてたので、明日の昼に体験してくるということだった。
「なんだよ、買い替えかよ。金持ちだなぁ」
と冷やかせば、
「買うわけないでしょ。まだ3年しか乗ってないのに」
と謙虚だったが、酔った本音では新型ランクルが欲しいのだと口ぶりでわかる。
勢いで挑発に乗ってしまったが、確実にオヤジの勝利は見えている。
オヤジが極悪非道な男なら容赦しないのだけれど、デレデロな酔っぱらいに刺激を与えただけだから、ネタとしてこれはとっておこう。

「でも、もらってもうちの駐車場に入んないんじゃない ? 」
ああ、テンネンのかあちゃんが現実的なことを言ってくれちゃう。
しゃあない、つきあうか。
「いいんだよ。もらって名義変更したら、すぐに売っぱらっちゃえばいいんだから」
「なに言ってんだ。夫婦でそんな相談するな」
「いいからいいから、気にすんなよ。どうせ覚えてないんだから」
「覚えてるよ。だれが忘れるもんか」
と、最後の泡盛の滴をグラスにたらすと、小指をピンとたててグビッと飲んだ。

そして数分後、予定通り舟を漕ぐ男に変身した「ヒトリモン」は、帰るための気付けに氷を一かけ背中から入れられ、「つめてぇな・・・」と薄目を開け、予定通り強制連行されて、「アベ総理」が勤務しているかどうか確認して千鳥足全開で帰った。
彼は絶対に今夜のことをある段階から覚えていない。
間違いなく自分が言ったセリフを忘れている。
ランクルは確実にオヤジのものになるハズである。

常連の方々に申し上げます。
今度「ヒトリモン」先生とカウンターで一緒になったら、上記のことをチクチクと言って頂きたくお願い申し上げます。
アー、たいへんだ。
証人がいっぱいいるぞう。
「ヒトリモン」覚悟 !

10:45:00 | mogmas | | TrackBacks