September 30, 2007

黄昏れジョーンズ

  
ユウコリンとデーブとともに異星へ帰ったと思われた「宇宙人ジョーンズ」が、金曜の夜ににひょっこり現れ、
「今はフランキーと名乗っている」
と、相変わらず胡散くさい物言いで告げてカウンターについた。
まったくの偶然だったが、そこにはかつて「蟒蛇の女帝」と恐れられた悪魔No.3「Cちゃん」が一杯目の生ビールを飲んでいた。
ネオンで光合成をする彼女も、元祖悪魔の「宇宙人ジョーンズ」と相前後して古の地球にたどり着いた宇宙人だったが、地球環境の悪化と寄る年波の影響で、もはや過日のような破壊的な光合成は鳴りを潜めていた。
古き悪魔たちは久々の再開に乾杯し、なんと老人介護の話で盛上がるのだった。

と、そこへ、何も知らない田舎者「小岩ヨウコリン」が紛れ込まされ、恐る恐る古兵の様子をうかがい、新参者の宇宙人らしく小さくなっているフリをした。

やがて、ちゃりんこ形UFOで駆けつけたチョキチョキ軍団、「「ハーバーくん」とその後輩「シゲ・タケ」コンビが乱入したが、これもまったくの偶然、運命のなせる業だった。
若くして悪魔ナンバーを獲得した「何の取り柄もない色男」が、「バーバー星」から来たことは周知の事実だが、彼の後輩の「シゲ・タケ」コンビもそれぞれ「黒ハンペン星」「ホワイト星」からやって来た宇宙人なのだ。
カウンター回りの温度が急速に高まるのが感じられた。
この狭い店に宇宙人が6人も・・・、だがその夜はそれで終わりではなかった。

つづいてたどり着いたのは、週末の大悪魔「島人星人」の「「ヒトリモン」であった。
だが最近の彼の挙動には怪しむべき点が多い。
「バーバー星」のレーダーはいち早くその異変を察知し、席を立ちオヤジ側に待避行動をとった。
すると予想通り、「ハナ、ハナ、ハナ、ハナ・・・」というUFOの着陸音とともに2人のエイリアンが入って来た。
「フラワー星」からの使者「ユカ・アソ」コンビだ。
とたんに「ヒトリモン」の顔が緩む。
先日「ハッブル宇宙望遠鏡」でも観測された事実だが、「島人星」と「フラワー星」は急速接近しており、その影響で「バーバー星」の生態系は乱れてしまったのだ。

互いに相手の心が読める宇宙人同士だから、愚かな地球人のように紛争を起こすことはないが、どちらが地球のことをよく知っているか合戦で、もの知らずをネタにして大いに笑い、飲むのであった。
「ヒトリモン」を例外として、自分たちより遥かに若い(おそらく2万5千歳以上)宇宙の隣人たちのパワーに圧倒された古の悪魔「ジョーンズ」と「Cチャン」は、しみじみ「世代交代だな・・・」とつぶやき、ただビールを飲み続けたのである。

そうして夜は更けていき、放し飼いになっていた「Cちゃん」は、宇宙警備隊に捜索願いを出す寸前だった「スチャラカ旦那」に連行されて地球を去り、バーバー軍団はちゃりんこ形UFOでそれぞれの秘密基地へ戻り、疑惑の「ヒトリモン」は案の定「フラワー星人」&「小岩ヨウコリン」に拉致されてカラオケ宇宙ステーションへ向かった。

取り残された「フランキー」こと「宇宙人ジョーンズ」は、プラダ星のハンカチで目頭を拭い、
「お願いだから、ワシと遊んでくれ。鳥肌実の物真似でも、エヴアンゲリオンのネタバレ話でも何でもするから、ワシをかまってくれ !! 」
そう言って、オヤジの手を握りしめて懇願するのである。
普段はゴルゴ13よりも非常なこのオヤジも、こんなショボ降る雨の深夜に、孤独な宇宙人を放っぽるようなマジェスティック12の連中のようなことは出来ない。
仕方がないので最寄りの蕎麦ステーションで、「宇宙人ジョーンズ」の気の済むまでビッグバン理論とケロロ軍曹について、スキヤキウエスタン・ジャンゴと宇宙から来た暴れん坊ギャンゴの違いについて、渡り鳥と焼き鳥の焼き方について、じっくり話し合った。

店を出ると、傘が必要な程度に雨は降っていた。
ドラえもんの4次元ポケットに匹敵するプラダ星のバッグから、木枯らし紋次郎の三度笠に似た傘を取り出して差した「宇宙人ジョーンズ」は、地球に長く居すぎたことを憂いて、我が家までの道のりを歩いた。
オヤジはその後ろ姿を見て、「黄昏れジョーンズ」と呟いたのである。
多分彼はまだ地球のことが好きなのだと思う。

画像の表示レオン風ちょいワルオヤジを装う「ジョーンズ」

15:42:33 | mogmas | | TrackBacks