March 16, 2008

初日の落とし穴

  
完璧な準備、パーフェクトな段取り、万全の体調、揺るぎない自信、そして思わぬ落とし穴・・・・・。

大量の仕入れと、大量の仕込み、次に何をすべきかわからない4ヶ月弱のブランクを抱え、すっかり無口になってしまっているのに体が自動的に作業をこなしてゆく。

だがイライラがつのって、無駄な動きばかりする。
2時から3時の間に来るという業者を待っているためだ。

前日にビールサーバーから、ガスが漏れているような“シューッ”という音が聞こえてとても尋常な状態ではなかったので、上部のカバーを開けて確認すると、ガス抜きの弁のような部分からやはり漏れて音がしていた。
このガスの漏れる“シューッ”はとても精神衛生上よろしくないし、肝心な時に生ビールが注出できなくなったらアウトだから、すぐに酒屋さん経由で業者に連絡を取ってもらったのだ。

オープン当日だというのに、どこまでツキに見放されているのかと暗澹たる気持ちになるが、わずか20分ぐらいで業者の修理は終わり、無事サーバーは使えるようになった。
もうこれで大丈夫、と思ったのもつかの間、5時の開店時間にまたしても落とし穴に落ちた。

表通りから7、8メートル引っ込んでいるモグランポは、店の外部コンセントからコードを引っ張って路上看板に電気を供給しているが、そのコードの引き回しや巻き取りが面倒で、スマートでないと過去10年間思っていた。
そこでそれを解消しようと、コードの巻き取り器を作ることにしたのだった。
最初は防滴用の電源ドラムを改造するかと考えたが、そんな複雑なことでなく、水道ホースの巻き取り器を利用すれば安上がりで簡単だということに気づいて、今まで使用していた屋外用の電源コードをホースの代わりに巻き付けてみたのだ。

実験はうまくいった。
クルクルとハンドルを回せば巻き取れるし、引き出すときは本体を固定すればスルスルとコードは延びてくる。
色も外壁と同じように塗って、こんな便利なもの世の中になかろうと、ひとり悦にいっていた。
だが実際の7、8メートルの距離を、ピンと伸ばしたことはなかったのだ。

オープン当日に初めて表通りに看板を設置して、いざスルスルとコードを引き出したら、ぐわぁらぁぁぁぁん・・・・・、なんと素人の浅はかさ、コードは5メートルほどしかありませーん !
あと3メートル、看板を寄せてもコードを引っ張っても全然無理。
その間抜けな現場を、5時ちょうどにやって来た「ヒトリモン」先生に目撃されてしまった。

「延長コード買って来てやろうか ? 」

ぐやじい・・・・。

「ええぃ、延長コードぐらいあるわい ! 」

不様に延長コードを足して、無事看板に明かりが灯ったのである。
この事実を、本日来て下さったお客様は誰ひとり気づかなかったことと願いたい。(「ヒトリモン」先生を除いて・・・)
明日、どこかでトッ違えてしまった10メートルのコードを探して、誰かに突っ込まれないように交換してしまおう。
自分で掘った落とし穴は、自分で埋めてしまうのだ。

出足のつまずきは、その後の営業に影響したか ?
たぶんない、と思う。
シュミレーションで気づかなかったことがあったということは否めないものの、まあ初日にしてはそれほどパニクったりしないでできたと思う。

新しいアルバイトの「ミキちゃん」もよくやってくれた。
最初にしてはお客様とのコミュニケーションもよかったし、物怖じしなくて助かった。
かあちゃんの方がよっぽどアタフタしていたから、明日「ミキちゃん」がいなくてどうなることやら・・・。

深夜1時を過ぎても片付けは終わらず、明日の仕込みも残っていたが、かあちゃんが体調を崩すと致命的なので、ほどほどにして先に帰した。
ひとりでシコシコと、けっきょく2時半まで仕事は片付かなかった。
腹も減っているし、サクッと飲んで、サクッと食べて帰るかとも思ったが、ここで調子にのらない方がいいと思い、真っ直ぐ帰ることにした。

駅前で中国人に声をかけられた。

「オニィサン、マッサージイカガデスカ。アサマデズット6センエン、マッサージ・・・」

そのオネェさんの顔を見て、思わずプッと吹き出してしまった。
フン、もう今日は落とし穴におちるもんか。
こんなヘロヘロの状態で、このオネエさんとアサマデズットマッサージになったら、それこそ落とし穴どころじゃなくて、墓穴を掘ることになってしまうだろう。

「ワタシハブルースリージャアリマセン、アチョー、チンパオラー、サイチェン」

君子危うきに近寄らず !




04:39:10 | mogmas | | TrackBacks