April 02, 2008

妄想 銀幕の大スタア

  
怒濤の3月は終わってしまった。

値上げの4月、怒りの4月に突入した。

先日の土曜日、開店間もないというのに、臨時休業を密かに企てていたが、幸か不幸かその予定は流れた。
しかし、日本映画界はまたしても世紀の逸材を発掘するチャンスを逃したのである。


ことの発端は、オヤジの元へきた1通のメールであった。
それにはこんな案内が記されていた。

2008年7月下旬全国公開に向けてただいま製作中の劇場映画、その報道陣・マスコミ記者役を募集しており、エンドクレジットに名前が入るというプライスレスな特典あり。

29日の午後2時から、収録場所は都内だというので、こりゃ取りあえず申し込みをするっきゃない。
ノーギャラで服も自前だが、デジタル一眼レフカメラもあることだし、「ヨウコリン」の口ぐせではないが、なんせ「知的」なナイスミドルなワタクシメは事件記者にピッタリの配役ではないだろうかと、すでにそこから妄想がはじまっていたのであった。

洞爺湖サミットに参加している各国の首脳・要人たちが、協力して地球的危機に立ち向かうという表明をする政府の秘書官を取材するというシーンで、プロの役者を喰ってしまうほどキャラが立っているオヤジは、最初は煙たがれるのだが、やがてその存在感に監督も抗えなくなり、ついには準主役級の待遇を得て作品に重要な花を添えるのである。
そして、ワールドプレミア試写会でその演技に惚れ込んだハリウッドのプロデューサーが、名指しでオヤジを次回作の主役に抜擢するのだった。

俳優「ズキュン ! ハマタ」の誕生である。

だが「ズキュン ! ハマタ」はヌルいハリウッド映画で銭を稼ぐことをよしとせず、数百億円の自費を投じ、製作・脚本・監督・主演の大作映画を完成させるのであった。

そしてその大作映画はカンヌ、ベルリンで大喝采を受け、一躍時の人となって凱旋帰国をした「ズキュン ! ハマタ」のもとへ擦り寄る企業、政治家、ヤクザ、オネエちゃんども。

そういう鬱陶しい連中を蹴散らし、さらに全世界を又にかけた超大作映画の製作に取りかかった「ズキュン ! ハマタ」には、「ズキュン ! ガールズ」というユニットが結成され歌や踊りに大暴れ。
初代「ズキュン ! ガールズ」には、知的でスリミーに変身した「バキュン・ヨウコリン」と、シークレットブーツで身長を10センチガサ上げした「ドキュン・akko」のふたりが選ばれ、「ズキュン ! ハマタ」の映画には欠かせない華を添えることになった。

そして時は幾星霜、数々の歴史的名作を残し、巨万の富と名声を築き上げた「ズキュン ! ハマタ」は、映画「忘れようとしても思い出せない」を最後に引退、何処ともなく姿を消した。
国家予算に匹敵する資産は、全て恵まれない人に寄付し、完全に人々の前から消え去った「ズキュン ! ハマタ」は、南大東島の遥か彼方にあるという幻の島「ヒトリモン島」でひっそりと余生を送っていた。

週に1度必要なものを船で運んでくれるのは、「琉球ハブ男」と名を変えた「ヒトリモン」先生であった。

「おーい」

「琉球ハブ男」が声をかけても、浜辺で座り込んで泡盛のビンを抱えている「ズキュン ! ハマタ」は振り向かない。
近づいて様子を見れば、空になった一升瓶の口をくわえこんで永遠に記憶を飛ばした男の幸せな死に顔がそこにあった。
右手の人差し指が砂に最後の文字を記していた。

「THE END」

やがて波がその文字を静かに消してゆき、「琉球ハブ男」の口から、朗々とマントラが唱えられるのであった。


妄想は果てしなく広がるが、それは自由だ。
だが妄想の元になった映画は、「ギララの逆襲洞爺湖サミット危機一髪」というゴジラ以来久々の怪獣映画なのだ。

「宇宙大怪獣ギララ」とは、怪獣映画全盛期の40年前に松竹で製作された唯一の怪獣映画で、お話しと特撮はダメダメちゃんであったが、「ギララ」の秀抜なデザインと、宇宙船「アストロボート」のかっこよさが記憶に残る作品であった。
こんなキワモノを蘇らせようとしているのは、「河崎実」という監督。
古くは「地球防衛少女イコちゃん」から、「いかレスラー」「コアラ課長」「ヅラ刑事」、最近では「日本以外全部沈没」などという「オバカ映画」の巨匠だ。

あまりに素晴らしすぎて、出演できないのが口惜しい。
「ギララの逆襲洞爺湖サミット危機一髪」で、この妄想だ。
オヤジのレベル、推して知るべし、なのである。

ちゃん、ちゃん。





12:55:14 | mogmas | | TrackBacks