May 14, 2008

ボヤボヤしてたら真っ黒コゲにな


その時我ら夫婦は、カレー作りの真っ最中だった。

かあちゃんは大鍋で、ばあさんと小僧と居候向けのお子ちゃまな味のやつを。
オヤジは火を噴き汗タラタラの大人向きのやつを。

こうしてお昼にせっせと晩飯を作っているのは、このあと浅草「まつり湯」に行って、なんにも考えずにダラダラ休日を過ごしたいからだった。

イヤな雨もショボショボ降っているし、風呂でさっぱりとリフレッシュして明日に備えるのはいいことだろう。

グツグツ、グツグツ、カレーの匂いが家の中に充満する。
味見して味を調える。
う〜ん、辛さが足りない。
もっと火を噴くような、燃えるような…、と、そこへ一本の電話!

かあちゃんがなべをかき混ぜる手をとめて、受話器を取る。
「もしもし。えっ!?火事!? うち?ぜんぜん…」

我が家の近所で働いている弟の嫁さんから、消防車が何台もこちらへ向かって行ったので、心配して電話したというのだ。

耳がいささか遠いばあさんはともかくとして、消防車のサイレンが迫って来て気づかないなんてあり得ないが、それだけカレー作りに熱中していたというのか?
かあちゃんは様子を見に外へ飛び出して行った。
オヤジはベランダに出て、辺りを見て臭いを嗅いでみた。
火事特有のあのイヤな臭いはないし、サイレンの音も、いや、ボンベを背負った消防士が通りを横切るのが見えた。
地面には白いホースが伸びている。
上空をヘリが旋回している。
こりゃ、まさしく火事の物々しさ。

すわっ、現状を把握することが安全の要と、階段を下りかけて、あぶねぇ、あぶねぇ。
カレーの鍋を火にかけていたのだった。このまま忘れて火事場へ向かったら、こっちが火事を出してしまうかもしれなかった。
火を噴くようなカレーで、ほんとの火を出しちゃあシャレにもならない。
火の用心、火の用心。

柳原千草園の前に消防車が2台、さらに道路が広くなっている先にハシゴ車を含む4台が、回転灯をきらめかせて控えている。
だが相変わらず火事の臭いはしないし、伸びたホースは萎んで、放水された様子はなかった。

現場は我が家からほんの10メートルほどのところ。
狭い路地の向こうにホースの先が消えている。
立っている警官に様子を聞くと、火は出ていないと言う。
だが詳しいことはわからない。
まあとりあえず、大事にはならないようなので安心した。
いずれかあちゃんの油売り情報網で、詳細は判明するだろう。

再びカレーを煮込んだ。
ほんと、ボヤボヤしてたらワタシのカレーは真っ黒コゲになっちゃうところだったよ。
“ひとの火事みて我がカレー直せ”

火だけは気をつけてくださいネ。

以上、「まつり湯」で体内の消火活動に精出すオヤジからでした。


18:20:25 | mogmas | | TrackBacks