October 01, 2005

ひげ男の夜

当店は、お客様が自分で焼かないスタイルなので、男性が一人で来店されることも多い。
カウンターで、本や雑誌を熱心に読みふける人もいれば、ひたすら携帯でメールを打ち込む人、黙ったまま身じろぎもしないで待つ人もいる。
基本的には、お客様のスタイルをじゃましないようにしているが、鉄板の上に注がれる沈黙の視線は、正直つらい。
こう見えても以外と人見知りするほうだが、なにかきっかけさえあれば、会話をしたほうが気持ちが楽だ。

ある晩のこと。
偶然とは予告なくやってくるもので・・・。
一人、また一人と男性がカウンターへ。椅子を1つおきに席につき、5人の男性がウンターに陣取った。
さりげなく視線を外す男たちの間に、気まずくも不思議な空気が漂う。
それもその筈、口ひげ、あごひげ、どろぼうひげ(口の悪いCちゃんの旦那さんに言わせると、オヤジのひげはどろぼうだそうだ)と、ひげ男のオンパレード。焼いてるオヤジもひげならば、待ってる人も全員ひげ男。
この光景を第三者が見ていたら、相当ヘンだ。
「ひげ専科・モグランポ」の開店でござい。
おかしな空気の中、黙々と焼くひげオヤジ。
出来上がったものを黙々と食べ、かつ飲むひげ男たち。
やがてひげ男たちは一段落した。
誰がこの雰囲気を打破するか、緊張が走る。
そこへ、何と不運な・・・。
うら若き女性が2人、ご来店。
いっせいに振り向くひげ軍団。
ギョッと、立ちすくむ女性2人。
顔を見合わせ、恐る恐る、「あの、いいですか・・・」
も、もちろん!
はじけるオヤジ!
「どうぞ、いらっしゃいませ!」
緊張の糸がほぐれ、帰るタイミングはここだ、とばかりに、お会計になだれ込むひげ男たち。
そして平安が訪れた。
口開けに端のカウンターについた、口ひげの(名前までは知らないのが、何度か来て頂いている)男性は、小さく息をつき、かすかにオヤジを見て苦笑い。

その後、「ひげ専科・モグランポ」のメンバーが一堂に会することはありませんでした。
数年前の、世にも不思議なお話の一席でございます。
お後がよろしいようで・・・。



10:15:00 | mogmas | | TrackBacks