October 10, 2005

お好み映画No.16 「お父さんのバックドロップ」

中島らもさんに追悼。

遅ればせながら、らもさんもちょこっと出演している「お父さんのバックドロツプ」を見た。

短編のお話を膨らまして1本の映画にするというのは、簡単なようでそうでない。
大抵どうでもいいようなエピソードがついて、緩慢な話になってしまいがちだ。
そんな意味で言うと、この映画の神木くんと南果歩さんの起用はいい感じなのだ。

東京育ちのおぼっちゃん風の神木隆之介くんと、わけありの焼肉店店主の南果歩さんの存在感で、宇梶くんのレスラーらしくない演技も、まあ許せるのだ。

で、なんでこの映画が「お好み映画」かといえば、売れないプロレスラーのお父さんと、チャンバラトリオの南方英二扮するおじいちゃんと、神木くんの3人が、ちゃぶ台に乗せたホットプレートで「お好み焼き」を焼きながら食事をするシーンがある。

一雄(神木くん)、ふてくされたように薄っぺらなお好み焼きを、手前ではなくて向こう側に引っくり返し、ホットプレートからはみ出してしまい・・・
南方「へたやなぁ」
と言われ、俯いてごはんを食べない。
宇梶「食わんのか?}
神木「ごはんとお好み焼きじゃ、食べれない・・・」
南方「そんなことじゃ、りっぱな大阪人になれんぞ」
と言われてしまう。

でもね、私が思うに、あの映画のお好み焼きはいかにも不味そうで、ご飯のおかずにはならんと思うのですよ。
よけいな炭水化物はどけて、ソースご飯でもいいかもね。

と、このようにたった1カットでも「お好み焼」あるいはそれを連想させるようなものが出てくる映画を、お好み映画と認定し、ここで紹介していくことにしました。

さて、この映画のオヤジ的見所はといいいますと、もう1つ。
神木くんが大事にしていた亡き「お母さん」のビデオを、あっささりと消されてしまい、何とかならないかと、「鶴瓶」演じる町の電気屋さんに相談するシーンで、その背後の電柱に貼られているチラシに注目。
「丹下拳闘倶楽部」の練習生募集のチラシなのです。
泪橋下の丹下段平会長直筆のような筆書きで、ジョーと共に燃えつきそこなった、“悪魔のあっくん”必見のお遊びがちりばめられているのです。

らもさんの原作を読んだ人も、そういった映像のお遊びを見るのも一興かと存じます。

さらにオヤジ的所見。
神木くんは将来末恐ろしい美少年になると思いますが、かつて我がモグランポでアルバイトをしてくれた「エリカ」ちゃんとよく似ているのです。
してみると、美少年と美少女は紙一重ということでありますな。
うーん、戦国武将のお小姓好きがちょっと解りかけた夜なのであります。





13:49:00 | mogmas | | TrackBacks

October 07, 2005

シンデレラマンはカボチャの馬車でMSGへ行ったか?

朝から何も食べず、昼過ぎの劇場に入り、どなた様の頭にも邪魔されない席に着く。
グーグー鳴る腹の虫を、一杯のコーヒーで押さえつけ、いざ鑑賞。

空腹のせいか、やたらと食べ物のシーンが目につき、記憶される。
スリーンから時折放たれるボディブローに、最後まで耐えられるか。

【ダメージ1】
ガスも電気も止められる寸前のアパートで、早朝から働きに出る夫のために、妻はフライパンで粗末なパンケーキを焼く(う、うまそう・・・。やっぱパンケーキはアメリカのお好み焼だね)。
その音と匂いに目ざとく起きて来た幼い末娘にパパが言う。
『リッツで分厚いステーキをたくさん食べた夢を見た。だから今朝はお腹がいっぱいなんだ。かわりに食べてくれないか』
ひもじい子供たちのために、食事もとらず仕事に行く主人公。
このとき妻は、半分中身の入っている牛乳瓶に水道から水を足す。
このことはとても重要です。シンデレラマンが何のためにファイトをするかという、クライマックスのセリフにつながってくるので。

【ダメージ2】
港湾労働者としてやっとこさ職にありついた主人公は、知り合った男と近くの店に入る。
相手はビールを頼むが、自分は水でいいという主人公に、店のオヤジはイヤミを言う。
取りなすようにビールをおごってくれる相方。サーバーから注がれる生ビール(くわっ、うまそう。でもまてよ。この時代まだ“禁酒法”が施行されてたんじゃなかったっけ?)。
2人でジョッキを手に窓側の席に着き、ビールを飲む。

【ダメージ3】
やっとつかんだ試合当日。
両手にテープを巻いて準備万端と思いきや,主人公の腹がグ〜と鳴る。
実は何も食べていない。
そんな状態で15ラウンド戦うつもりかと、マネージャーが控え室を飛び出し,持って来たのが洗面器のような大きさのボウルに入った“ハッシュドビーフ”だ。
しかしスプーンがない。
再び控え室を出て探しにいくマネージャー。
しかし、もう我慢できない。
“ハッシュドビーフ”のボウルに鼻先を突っ込んで、犬食いをする主人公(間違いなく私もそうする。絶対このうまそうな“ハッシュドビーフ”を家でつくってやるぅ)。

【ダメージ4】
ビッグファイトが決まり、記者たちへのサービスをかねて、プロモーターが押さえてくれた高級レストランで食事をする主人公とマネージャー夫妻。
まだ少し残っている皿を引き上げようとするウェイターの手を制し,食事を続行する。
妻は家で待つ子供たちのために、手をつけなかったステーキをそっとナプキンに包む(それも食べたいっ。くれぇぇ)。
対戦するチャンピオンが、挑発のようによこしたシャンパンもお持ち帰りだ。

さあ、ここから先は言えません。
言えるのは、空腹を忘れさせるほどのクライマックスだということ。

厳しいトレーニングの積み重ねで、一気に運命の試合へなだれ込むという、一連のボクシング映画とは少し違います。
激せず、冷静さを失わず,市井の小市民として嵐が過ぎ去るのを耐えて忍ぶ主人公の姿に、静かな高揚感を持ちつつ、古い時代のトレーニングでつくられた肉体と、当時のファイティングスタイルで見せる試合に、映画の観客は当時のMSGの観客と一体化していくのです。

映画を見た後、少々お勉強をしたおかげで、「ミリオンダラー・ベイビー」のときもあった疑問“なぜアイルランドからの移民者にボクサーが多いのか”ということがわかりました。
それは、ジム・ブラドックがジョー・ルイスに敗れたのち,ジョー・ルイスがロッキー・マルシアーノにKOされた、という流れとも無関係ではないと思います。
そのあたりのことは、次のボクシング映画のときにでも書こうと思います。

ちなみに、マネージャー役のポール・ジアマッティがよいです。

やはりボクサーはハングリーでないといけません。

ぜひ、ご鑑賞の際にはペコペコに腹を空かしてどうぞ。

そうそう、シンデレラマンは、黒塗りの送迎車で試合会場へ運ばれて行きました。


13:06:00 | mogmas | | TrackBacks

October 03, 2005

TAKE THE A-TRAIN,SOME DAY

前から見たかったDVDを見るきっかけはさまざまだが、「いつかA列車に乗って」という映画は、劇場で見逃したこともあり,いずれ見ようとは思っていた。
この映画には、“悪魔のあっくん”が最近お気に入りの栗山千明
も出演している。

物語は横浜(たぶん)にあるジャズクラブ「A-TRAIN」を舞台に、オープンからクローズまでの一晩でおこる、客とスタッフの人間模様を、ジャズのスタンダードナンバーが緩やかに流れるように描いていく、一幕もののお芝居だ。

監督は荒木とよひさ。音楽監修と重要な出演者として、三木たかし。テレサ・テンのヒット曲「つぐない」や「時の流れに身をまかせ」のゴールデン・コンビだ。
他には、荒木監督の奥さんである神野美伽が、愛川欽也の不倫相手で出演とていたりと、ちょっと見は演歌色の強い、みそ汁みたいな映画かと思いきや,まるでそんなことはなく、終了したときには、ウイスキーが飲みたくなるような作品に仕上がっている。
多彩なベテラン出演者のなかに、栗山千明や津川雅彦の娘もういういしく華を飾っている。

上質な大人の映画で、役者の演技もすばらしいのだが、1つだけ気になるのは・・・。
例えば、寄席にいったとしよう。
演目通りに芸人が登場し、存分に芸を披露して次にバトンタッチする。次の芸人も持ち前の芸で観客を沸かせ、次々にフログラムは進んでいく、、、。
というように、各シーンでの役者の演技はすはらしいのだが、全体の映画の流れやリズムという点で,お約束事になってしまっているように感じてしまったのだ。

公開後、さまざまな賞をとったりと、なかなか健闘はしたようだが,興行的にはいまひとつだったようだ。
この手の映画を、もうすこしマメに上映してくれる小回りの効く映画館がたくさんあれば、また違う展開になったかもしれない。

まあでも、見ていない人にはこの映画をお薦めしたい。
ほんのり暖かい気持ちになれるとは思います。





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