April 26, 2007

ナイトミュージアム

  
予告編を見たときは、ちょっと怖い映画なのかと思ったが、さにあらず。
「ロビン・ウィリアムズ」が出ているからというわけではないけれど、「ジュマンジ」や「ザ・スーラ」を思い浮かべてしまった。
じつは、こういう映画も結構好きだ。
だから、細かいことには目をつぶり、あら探しをせず、素直な気持ちで、童心にもどるように楽しむ。

博物館や水族館は子供のときから大好きで、何十度となく行っている。
しかし、客のいないがらがらの展示室にコツコツと響く靴音はちょっと不気味だ。
まして、閉館した深夜の博物館に閉じ込められたと考えると、たまらなく気味悪い。
うつろに見開いた剥製の目、もの言わぬ展示物の気配、古い物特有の臭い、薄ら寒い空気、それらに圧迫されそうになる自分を想像をしてみる。
「ウルトラQ」「怪奇大作戦」「トワイライトゾーン」の洗礼を受けた身には、不可思議なよろしくない想像が山ほど浮かぶが、「ナイトミュージアム」のような陽気なアメリカンなコメディは想像の他だった。
なるほど、監督のショーン・レヴィは、スティーブ・マーチンの「12人のパパ」や「ピンクパンサー」を手がけたのか。
出ている役者も主演の「ベン・スティラー」や「ロビン・ウィリアムズ」をはじめ、「ディック・ヴァン・ダイク」「ミッキー・ルーニー」などベテランの芸達者も揃え、なかなか味のある配役で魅せる。

ニューヨークのアメリカ自然史博物館をモデルにしたミュージアムで、夜な夜な命を吹き込まれて動き出す展示物たち。
それを知らずに夜警の仕事にありついた主人公ラリー。
先輩の警備員がみな高齢でリストラにあい、1人で警備の任につくラリーには、ボロボロに使い込まれたマニュアルが意味ありげに残され、不安で退屈な長い夜が訪れ・・・、と思いきや、ティラノサウルスの全身骨格模型が動き出すは、第26代米国大統領セオドア・ルーズベルトの蝋人形は話しだすはで、えらい騒ぎに巻き込まれ、散々な目にあい朝を迎える。
なぜ夜になると展示物が動くのか ?
どうしたら彼らを制御できるのか ?
“過去の歴史に学ぶことだ”ルーズベルト大統領の言葉で、必死に展示物について学んだラリーは、万全の態勢で夜をむかえるのだが・・・。

この話の中では、悪さをすれば罰を与えられることはあっても、1人の死人も罪人も出ない。
それは子供映画だからというのではなく、まだアメリカにも心が病んでいない人がいるということだろう。
重箱の隅をつつかない、これがファンタジーを鑑賞する基本です。

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April 21, 2007

サンシャイン 2057

  
50年後の未来。
原因は不明だが、太陽の活動が衰え、地球は急速に冷えて人類滅亡の危機を向えている。
それを救うために、最後のミッションに向う宇宙船「イカロス2号」。
細長い船体の前に、パラボラアンテナのような太陽熱を遮断するシールドを広げ、さらにマンハッタンと同じサイズの巨大な核爆弾を取り付け、瀕死の太陽に向って進む。
「イカロス2号」というからには当然「1号」も存在し、それは7年前に先発して消息不明。
太陽に何の変化もない事から、最初のミッションは失敗に終わったと推測され、地球上のすべての核物質をかき集めて「イカロス2号」の爆弾は造られた。
この“人類最後の希望をこめた核爆弾 ! ”を軌道上から投下し、再び太陽を甦らせ地球を救おうというのだ。
無謀にして勝算の限りなく薄いミッションに挑むのは8人の選ばれたクルー。
「イカルス2号」の冷静沈着なリーダーは、カネダ船長(よぉっ、真田広之いいです ! )。
キリアン・マーフィもミシェル・ヨーも、いいねっ !
宇宙船、宇宙空間という密室の中で、次々に絶望に追い込まれる男女。
果たしてミッションは成功するのか ? 地球の運命は ? 「イカルス1号」は ? 乗組員はどうなる ?

と、様々なスリルとサスペンスな問題をを抱えて物語は暗黒の宇宙空間で展開するが、ご都合主義のハリウッド映画「アルマゲドン」で感動して泣けた人には、このお話はちょいと重く、手放しなハッピーエンドを期待して見ると肩すかしを食らう。
「2001年宇宙の旅」「エイリアン」「イベント・ホライゾン」「惑星ソラリス」といった一連の宇宙物を思い浮かべるも、思索的だがジャンル映画ともちょっと趣きが異なる仕上がりで、たぶん、劇場公開時には不人気でも、DVDがリリースした後に話題が高まるようなカルト的な要素が強い作品だと感じた。
「核爆弾」という悪魔の兵器を「希望」とする、ちっぽけで宇宙の塵に過ぎない人間のあがきを「絶望」へ向わせる「意志」の存在は、1人の人間の死によって多くの命を救うという、思い上がった安っぽいヒューマニズムを打ち砕く。

“人類なんて滅亡してもいいんじゃないか”
“失敗してもなにも変わらないんじゃないか”
しょせん運命はコインの表・裏。
“どっちが出ようといいじゃないか、アンタならどうする ? ”
スクリーンの向こうからシニカルに笑いかける「意志」は、監督「ダニー・ボイル」だろう。
「トレインスポッティング」や「普通じゃない」、「ザ・ビーチ」「28日後…」のイギリス人は、地球でも宇宙でも巧妙に嘘をつく。

しかし、太陽までの長い航海が可能なテクノロジーを持ちながら、最終手段が「核爆弾」しかないという50年後の人類は悲しいし、人間以上の存在と予定通りのカタストロフィはやや不満だ。
まあ、東宝特撮のように超兵器や怪獣が登場しても困っちゃうんだけど・・・。
シネコンではもうすぐ終わっちゃうだろうし、DVDが出たらもう一度見るかも。


11:51:12 | mogmas | | TrackBacks

April 12, 2007

電送人間

  
軍国キャバレー「DAIHONEI」の入り口には、剣を装着した三八式歩兵銃を持った兵士が、歩哨よろしく直立不動で呼び込みをしている。
店内でも歩兵の格好をしたボーイが、キビキビした動作で客のオーダーをとり、ダンスフロアでは全身を金ピカにぬった半裸のダンサーが、扇情的な踊りを披露している。
各テーブルには胸元が大きく開いたミニスカートのセーラー服(女学生の制服ではなく、セーラー・水兵さんの制服)姿のホステスがついている。

新聞記者の桐岡(鶴田浩二)は警視庁の小林警部(平田昭彦)と向かい合わせで席についてこの店を張り込んでいるが、つまらなそうな顔で黙っているので、
「こちら、ぜんぜんおとなしいのね。模範兵ね」
と、ホステスにいわれてしまう。
グラスの酒を1口飲んだ小林警部は顔をしかめ、
「やけにヒリヒリする酒だな。なんて酒だ ? 」
と訊くと、ホステス平然と
「焼夷弾よ」
と答える。
「もっといいの持ってこいよ。特上な」
するとホステス敬礼して、
「ハイ、ミサイル2丁 !! 」
急いでやってきたボーイもシャキッと敬礼して
「ハイ、了解 !! 」
「おい、氷嚢(アイスのことですな)もたのむ」
ホステス立ち上がって最敬礼。
「ハイ、ただいま輸送してまいります」
と去ると、小林警部と桐岡は苦笑する。
やがてバンドが軍艦マーチを演奏すると、客はダンスフロアにホステスを誘い踊り出す。

いかがでしょう。
これが1960年公開の東宝映画「電送人間」の前半、グッときちゃう1シーンであります。
現在の地球の飲み屋には飽き飽きしている「宇宙人ジョーンズ」でなくても、ちょっと行ってみたいですなキャバレー「DAIHONEI」。
しかし、太平洋戦争からわずか15年でこのおちょくりはさすがです。
鉄人28号を駆って、難事件を解決している正太郎くんもびっくりだ。

主人公桐岡(鶴田浩二)は学芸部で科学記事を書いているのに、小林警部(平田昭彦様 !! )と大学時代の同窓生ということで社会部を押しのけて事件に首を突っ込むが、終始おもしろくない顔つきで、ろくろく見せ場もなく「電送人間・須藤兵長」(中丸忠雄)の不気味さに押されっぱなしだ。
それはまるで「なんでスターのオレが、こんなキワモノ映画に出なきゃならネェんだ」と言っているようで、本作品出演後ほどなくして鶴田浩二は東映へ移籍してしまう。
物語は、犯行予告と陸軍の認識票を送りつけ、銃剣で刺殺する連続殺人鬼「銃剣魔」を追う警察と、密輸疑惑と戦時中の秘密を抱えた陸軍中尉や諜報員の三国人(日本の旧植民地だった国や地域の国民を指す。一部では差別用語扱いされている)らのグルーブと、犯行現場に落ちていた「クライオトロン」という物質から秘密兵器「電送機」に迫ろうとする新聞記者の三つ巴の謎解きサスペンス・スリラーになっている。

脚本は「キンゴジ」「モスゴジ」を書き、「アンコ椿は恋の花」でヒットを飛ばした「関沢新一」。
監督は昭和の末期ゴジラを手がけ、特撮ファンの間では不人気な「福田純」。
レトロ・フューチャーな電送機のデザインと、手作り感いっぱいの走査線をはめ込んだ電送人間のイメージは、今見てもたまらなくチープでカッコいい。
特撮はもちろん円谷英二だ。

なかなかお話としては悪くないのに、新聞記者の桐岡(鶴田浩二)のつまらなそうな顔と、すべての締めくくりを自然の驚異、怪獣すらもかなわない天変地異で片付けてしまう東宝特撮のお約束シーンがちょっと興ざめだ。
欲求不満に落ち入ってしまった人は、軍国キャバレー「DAIHONEI」のような店が歌舞伎町辺りにないか調べてしまうかもしれないので、ご注意を。




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April 06, 2007

鉄人28号 白昼の残月

  
♪ すすめ〜 すすめ〜 正太郎〜 ♪のマーチが頭の中で鳴り響いている我々は、整理番号2番と3番を握りしめ、新宿武蔵野館のロビーに入って行った。
上映時間が近づくと、昼間にもかかわらず、年齢高めの働き盛りが続々と集まってきた。
劇場の椅子に腰を下ろせば ♪ ビル〜のまち〜に ガオーッ!! ♪ が頭の中を駆け巡り、ボクたちはすっかり昭和のよいこにタイムスリップだ。

ほんのちょっとしか昭和を知らない君たちのために、映画に出てくる大事な「昭和用語」をお勉強しませう。

1.復員兵・・・・戦時の体制にある軍隊を平時の態勢に復し、招集を解かれ外地から帰郷した兵士のこと。
太平洋戦争終結後10年経った東京では、まだ多くの復員兵の姿が見られた。

2.傷痍軍人・・・戦争で傷つきケガをした軍人。
上野や浅草、横浜などの繁華街や地方のお祭りなどには、腕や脚を失った兵隊さんが、施しを受ける箱を前に、道行く人に頭を下げ、アコーデオンやハーモニカを奏でていた。
その物悲しい曲が哀れで、子供心にも戦争の悲惨さが伝わってきた。
しかし、よいこはニセ傷痍軍人もいたことも知っていた。

3.お富さん・・・昭和29年、百万枚を超える大ヒットとなった「春日八郎」の代表作。
まさか「鉄人28号」の中で、こんなに歌われるとは予想外だった。その他「赤いランプの終列車」も流れたり、これが“よいこのアニメなのかかいっ ! ”と思わず突っ込みをいれたくなってしまう。
「お富さん」をフルコーラスで聞きたければ、「宇宙人ジョーンズ」が存分に歌ってくれるハズである。

4.巣鴨プリズン・・・現在その跡地にはサンシャイン60が建っているが、側にひっそりと、そこがかつて極東軍事裁判で裁かれた戦犯の収監所だったことを示す碑がある。
2004年のテレビアニメ版で、鉄人の宿敵「ブラックオックス」を操ったビッグファイア博士が、なぜか戦犯として収監されている。

5.同潤会アパート・・・内務省の外郭団体「財団法人同潤会」が、関東大震災の教訓をふまえて建設した近代的設備を備えた鉄筋コンクリート集合住宅。
映画では「共潤会アパート」と名を変え、重大な秘密を内包する建物として登場する。表参道ヒルズの地下にも、ひよっとしてすんごい秘密が隠されていたりして・・・。

6.伊福部昭・・・日本を代表する映画音楽の作曲家。重厚で荘厳、時におどろおどろしく、西洋音楽の常識を覆すような旋律は、耳に残る。
「ゴジラ」シリーズの他に、「地球防衛軍」「大魔神」「座頭市」等々、様々な映画音楽を手がけている。
「ゴジラ」を見たことがなくとも、音楽は聴いたことがあるという人も多いだろう。

7.鉄人28号・・・「鋼鉄人間28号」大日本帝國陸軍謹製「鉄人兵器第弐拾八號」の28というナンバーは、空襲で東京を火の海にした「B-29爆撃機」から命名され、落雷のような起動時のパフォーマンスは、フランケンシュタインの怪物が雷のパワーで命を吹き込まれたのを模している。ゆえに原作では、完全に兵器として造られた28号が暴走し、何もかも破壊しつくす恐怖と悪の権化として描かれ、少年探偵・金田正太郎に追いつめられて溶鉱炉に落ちて最後を向かえる。
「ゴジラ」と同じように、戦争が生み出した「巨大なものの恐怖」に、人間のわずかな「希望」が勝利する、「科学探偵まんが」で終わる、予定であった。
が、しかし、荒ぶるくろがねの魔神(マシン)を静め操り、悪にたち向かわせるのは、純粋な正義の心を持つ汚れなき少年探偵の手にした操縦機(リモコン)であると設定が変わったことで、「鉄人28号」は兵器から正義のヒーローへ昇華したのだ。
だからよい子はワクワクして ♪ てきーにわたすな だいじなリモコン ♪と歌ってしまうのである。 

なぜこのような前置きを長々と書いたかというと、「宇宙人ジョーンズ」から待ち合わせの電話がかかってきた時、その場にいた「ヨウコリン」が「どの映画を見るんですか ? 」と聞くので、
ヒント・・・オヤジ2人がルンルンしてテーマ曲を脳裏に浮かべ、できれば格子柄のジャケットに半ズボンとハイソックスはいて、ワクワクして劇場へ行きたい映画。
と言ったら、じぃっ〜〜〜と考えた末
「わかった ! 荻野目洋子だ ! 」
と、お答えになたので、ハラホロヒレハレ・・・・になってしまったのだ。
まあ、オヤジは「六本木純情派」だけどサ、

なんで、鉄人が、荻野目ちゃんに、なっちまうんじゃぁ〜っ !!


というわけで、戦争の傷跡を背負った28号と正太郎くんの活躍をご覧になる際は、ぜひ予備知識をもってのぞんで頂きたいと、かように思うのであります。

鉄人28号 白昼の残月
鉄人28号 白昼の残月 posted by (C)084-jan

もはや細々とネタバレを言いますまい。
ただ、桜の花びらがハラハラと散る「共潤会アパート」の庭で、幼い頃に生き別れた深ーい、深ーい事情のある母と息子が再会し、特攻隊から生きて帰ってきた息子に対して「お国のために散らずに、おめおめと生きて戻ってくるなんて」というところに伊福部昭の音楽が静かに入ると、ククククク・・・、ふと横目で見れば宇宙人が目頭をぬぐっているし、前後左右の同年輩も手が目元にいっているではないか。
かくいうオヤジも、熱いしずくが頬を伝っているのでありました。

深いアニメだなぁ。
実写では描けない、云えないことを、こんな風に見せるなんて。
きっと石原慎太郎なんかに見せたら、斜に構えて目をパチパチさせながら、「ま、アニメですからねぇ」なんて言いやがるんだろうな。
嘘つきめ、絶対投票してやらない。

ああ、しかしユルユルだ。
「宇宙人ジョーンズ」は「八代亜紀」で泣ける男だからいいけれど、オヤジはもう観念した。
こうなったら、宇宙人と蟒蛇オヤジで「涙腺ユルユルブラザーズ」を結成して、お涙頂戴の場所へ巡業でもするか。
泣きますよう。
たわいもなく泣いちゃいますよう。
ああ、困った・・・。
鉄人28号、見るべし。


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