September 19, 2007

あるいは裏切りという名の犬

  
原題は「36 Quai des Orf?vres」(オルフェーヴル河岸36番地)。
「河岸」だからって、パリの魚河岸で働く威勢のいい若い衆の話ではありやせん。
「オルフェーヴル河岸36番地」に何があるかってぇと、これがあんたパリ警視庁があるってんだからさあお立ち会い。
でもって、80年代に起きた実話をベースとした刑事ドラマって触れ込みで、監督がなんと、元警官だってんだから驚いた。
最近のアメリカ犯罪映画に食傷気味のオイラにゃぁ、この久々のフレンチ・フィルム・ノワールは、こりゃ大いに期待しちゃいますぜ。

だいたいフランス語のフィルム・ノワール(Film noir)てぇのは、「暗い映画」ちゅうぐらいだから、まさに冒頭から暗〜く陰湿でハリウッドとは趣を異にしたハードなアクションが展開されるってぇ寸法だ。
パリ警視庁に、優秀で次期長官の座にもっとも近い、だが志の違う2人の警視レオとドニがおったとさ。
かつて同じ女を愛し奪い合ったが親友だった二人が、多発する現金輸送車強奪事件の捜査をきっかけに、対立し、裏切り、片や刑務所へ、騙した方は警視長官の座につくという天国と地獄の運命の物語。
まさに「男同士の友情と裏切り」を描いて面目躍如なフレンチ・フィルム・ノワールの典型じゃああ〜りませんか。

主演の「ダニエル・オートゥイユ」は、表情こそあまり変えないものの、背中に哀愁、溜め込んだ情念を静かに演じ出色。
この前に見た「隠された記憶」とは雰囲気をぐっと変え、演技の幅を感じさせる。
名優なり。
対する「ジェラール・ドパルデュー」も、ともすればコメディー路線に見えるキャラを中年の悲哀に包み、後戻りできない悪を巧みに表現する。
派手なアクションで無理矢理ーな展開を押してゆくアメリカ犯罪映画がポップコーンムービーだとすれば、この映画はワイン片手にタバコをくゆらしながら見る大人の深夜映画といったところか。
原題の「オルフェーヴル河岸36番地」を「あるいは裏切りという名の犬」と邦題をつけた人はエライ !
思わずジャケ買いならぬ、タイトル買いをしてしまいそうだ。

だがしかし、パリ警視庁にはキャリアとかノンキャリアなんてものは無いのだろうか ?
現場で先頭切って突入するような、バリバリのデカが警視長官の椅子に座るなんてことがほんとにあるのだろうか ?
おフランスには、まだまだミーの知らないことがたくさんあるザンス、シェーッ !!

10:33:00 | mogmas | | TrackBacks