July 10, 2007

「新選組」近藤勇はどっぷり焼酎に漬かっていた

  
「三船敏郎」主演の東宝映画「新選組」を見た。画像の表示
まさにオールスターキャストと呼べる豪華な配役。
近藤勇にはもちろん世界のミフネ、沖田総司には「北大路欣也」、土方歳三に「小林桂樹」(う〜ん、これはちょっとどうよ)、悪役・芹沢鴨には「三國連太郎」(NHKの大河ドラマ「新撰組 !」 では、息子の「佐藤浩一」が同じ役を演じていたが、やっぱ父ちゃんのが一枚上手)、他にも「中村錦之助」「中村賀津雄」「田村高廣」(正和さんのお兄ちゃんね)、「中谷・風車の弥七・一郎」「中村梅乃助」、若き「古谷一行」、「阿知波・ウルトラセブンのソガ隊員・信介」、女優陣は「司葉子」「星由里子」「池内淳子」などなど、出演者のクレジットを見ているだけで楽しくなっちゃうほど。

お話は、浪士隊結成から新選組誕生、芹沢鴨暗殺、池田屋、蛤御門の変、鳥羽伏見の戦などを経て、流山から板橋の処刑場までと、まあ、「新選組」の歴史をオーソドックスに描いているのだが、そこはペナペナのNHK大河とは雲泥の差で、役者の力量、重厚感が全然違う。
もっとも、実在した人物たちの年齢より、映画の配役は10も20も歳が上だからそう感じるのがも知れないが、あの幕末の殺伐とした、生きるか死ぬかを毎日のようにくぐり抜けた人々を泰平の時代で演じようとすると、どうしても経験豊富な年齢になってしまうのかもしれない。

狭い池田屋の廊下で「三船・近藤勇」に出会ったら、もう死を覚悟せざるを得ないほど、圧倒的な太刀さばきと面構え。
この時「三船敏郎」50歳の男盛り。
不肖オヤジは、足下にも及ばないと忸怩たる想いでござる。
「三國連太郎」の酔いどれ芹沢鴨よろしく、問答無用で斬りすてられてしまうだろう。
それでも、肩の凝らない痛快時代劇な感じではありました。

物語の最後、板橋の刑場で斬首された近藤勇の首は、京都の三条河原へ晒されることになるのだが、ここで初めて近藤は焼酎と出会うのだ。
京都でブイブイいわせていた頃は、もちろん日本酒三昧で、焼酎なんてものは飲んだこともなかったに違いない。
なんと命の火が消えたあとに、しかも胴体と切り離されてから焼酎を味わうなんて、数奇な運命というほかござらん。

さてこれはどういうことかというと、戦国時代では打ち取った首は塩漬けにすることがほとんどだったが、これでは水分が抜けミイラのようになってしまう。
三条河原へ晒された近藤勇の首は、まるで生きているようで、しばらくは腐敗せず、京都の人々を震え上らせたのだという。
つまり、近藤勇の首は焼酎漬けにされて京都まで運ばれたのだ。
よくテレビの時代劇などで、刀傷を負った侍が、口に含んだ酒をプッーッと吹きかけて消毒するシーンがあるが、あれは焼酎だ。
幕末の時期には、九州では「芋」「麦」「米」などの焼酎は造られていたが、江戸あたりではなに焼酎があったのだろうかと考えると、酒粕焼酎に行き着く。
各地の農村では豊作を祈願して、「さなぶり焼酎」という酒粕を蒸留して造る焼酎が浸透していたらしい。
農民出身の近藤勇の首が、農民の祭り用の酒に浸されたのだから、これは因果な話だと、ちょっと切なくなるのである。

そんなことを想いながら、焼酎片手に映画を見終わったのだ。


15:34:56 | mogmas | | TrackBacks