August 01, 2006

キングコングとか・・・

  
♪ウッホッ,ウホウホ、ウホッホー、大きな山をひと跨ぎ キングコングがやって来た 怖くなんかないんだよー キングコングは友達さ♪
TVアニメ「キングコング」の主題歌を聴いた子供の頃、“ツッコミ”という言葉は知らなかったが、「山を跨ぐほどでかくねーじゃん」と思ったものだ。

1933年の映画「キングコング」の身長は18メートルだったが、1962年の東宝創立30周年記念映画「キングコング対ゴジラ」では、ゴジラの身長に合わせるべく40メートルほどに巨大化され、帯電体質という能力を付加されまさに「怪獣」となったコングが登場した。(オヤジはこのときのゴジラ、所謂キンゴジが大好き)
その後、67年の東宝映画「キングコングの逆襲」では、本家コングへのオマージュともいうべき「ゴロザウルス」との対決が、33年の「コング対恐竜」の死闘とまったく同じカット割で撮影され、円谷英二の思い入れの深さを知らされた。
この映画はゴジラシリーズ以外の怪獣ものとして、特に好きで何度も見ている。
北極点に眠る核物質・エレメントXを発掘するために作られたロボット怪獣「メカニコング」を相手に、東京タワーでの死闘はスリリングだったし,天本英世が扮したマッド・サイエンティスト「ドクター・フー」の怪しさと浜美枝の妖艶さには、子供心にもグッときちゃいました。

さらに時代は移り、1976年のリメイク版「キングコング」では、ラストシーンの舞台がエンパイア・ステートビルから世界貿易センタービルに変わっただけで、ほぼオリジナルストーリーのままだ。
しかし、全体のお話の荒々しさや美女と野獣の悲恋物語などは33年版に及ばず,話題性が先行したような映画だった。
コングはメカが仕込まれた20メートルほどの等身大なものが作られたりしたが、出来が今イチだったようで、今では大御所になった特殊メイクの「リック・ベイカー」のスーツでほとんど撮影されたらしい。
そのときの絶叫クイーン「ジェシカ・ラング」は、のちにオスカーを手にすることになる。
すぐあとに「キングコング2」も作られ,ビルの上から墜落したコングは人工心臓で甦り、レディー・コングとベビー・コングと仲睦まじく暮らしましたとさ。
このリメイク版の「キングコング」をTUTAYAさんで探したけれど、なかった。
きっと9.11のことがあるので、世界貿易センタービルが出てくる映画は御法度になっているのかもしれない。

さて、21世紀の巨大猿のお話はどうか。
劇場で3時間を超える尺の映画を見るのは結構大変だが、自宅でも油断するとトイレ・タイムが入り,ドリンク補給が必要になる。
準備万端で、久々に100インチのスクリーンに投影して観賞した。
お話を三つに区切ると、ニューヨークから「髑髏島」へ行くまでが第一部、「髑髏島」でコングと遭遇し仕留めるまでが第二部、最後はニューヨークへ戻りエンパイアステートビルのシーン。
一緒に見ていた小僧は、早くも第一部で大アクビ、しかしオヤジは1930年代の街並や、29年のウォール街の大恐慌の影響で失業者があふれ、希望が失われている世相が丹念に描かれていたり、「フェイ・レイ」に映画出演を断られた云々という件はわりと好きだ。
ここまで見て主演女優「ナオミ・ワッツ」の、シェリル・ラッドとエリザベス・シューを足したようなオヤジ好みの愛らしさにグッときて、新たな絶叫クイーンの誕生に心躍らせるのであった。(まてよ、アメリカ版「リング」でもうすでに絶叫していたんだっけ。やるなぁ、リメイク女優)

海図にものっていない謎の「髑髏島」は、お約束のロストワールド状態。
制作費2億700万ドル(248億4000万円)という映画史上最高の、「ロード・オブ・ザ・リング」で培った豪華CG満願全席状態で、お腹がいっぱいになります。
「ナオミ」ちゃんは、生きているのが不自然なくらいの体験をしてもおおむね元気で、着ているものも脱げず、ものすごく巨大で果てしなく、危険な生き物がウヨウヨいる島の中を、正確に素早く追跡する脚本家の先生の鼻は異様なくらい高く,きっとこの鼻で「ナオミ」ちゃんの嗅跡を追ったのだと、いいように解釈するのがお話を飽きさせない秘訣でしょう。
ともあれコングは美女の魅力に我を忘れ,人の手に落ちてしまうのでありました。

そしていきなり場面は変わり,ニューヨークであります。
ああ、やっぱり。
大予算でも端折るところは過去の作品と同様にここであったかと、今回もオヤジは少しがっかりする。
数々の苦難の末、食料も人員も失って、やっと捕らえた巨大なコングを、船体に穴の開いた船にどうやって積み込み、航海したのか ?
ピーター・ジャクソン監督はリアリティを追求したというが,瞬間移動は不条理じゃないのかい ?
荷揚げと荷下ろしをちゃんと見せてくれぃ ! と思う。

ニューヨークで見せ物として鎖に繋がれたコングは縛めを脱し、「ナオミ」ちゃんを探し求め、エンパイア・ステートビルに登りつめておなじみのラストを向かえるわけだが、怪獣ではなく、あくまで巨大な猿であるコングは、文明の力、いや、女性によって滅ぼされる。
ゴジラやモスラのように何度も生まれ変わって登場することはないので、シリーズ化は子供のアニメにとどまり,リメイクのたびに原点へ戻るのだ。
いくら欧米人がでかい猿が好きだといっても,巨額の費用で完璧なCG「キングコング」が生み出されたので,もうオリジナルストーリーでのリメイクは打ち止めにしてもいいでしょう。

ウィリス・H・オブライエンのストップモーション・アニメから始まった巨猿伝説は、その遺伝子をレイ・ハリーハウゼンへと繋ぎ、フィル・ティペットなど数多くの特撮マンに継承され、海を渡り円谷英二をも刺激するが、諸処の事情で日本では着ぐるみという文化になって現在に至っている。
近い将来再び「ゴジラ」が甦り、それに呼応するように怪獣としての「キングコング」が復活してほしいと願ってやまないのである。


14:54:36 | mogmas | | TrackBacks