August 26, 2006

夏から秋へ

  
今夜帰り道を家の近所まで来て、蝉時雨がないことに気づいた。
昨夜は「やかましいっ ! 」とバケツの水をかけたいぐらいに賑やかだった蝉の大合唱が、一声も聞こえないのである。
道端には鳴き尽くして死んだ蝉の死骸が転がっている。
なぜ一斉に鳴き尽くし、従容として死んでいくのだろう。
人通りもない深夜の桜並木に、微動たりともしない蝉の骸が落ちている。
この悲しい現実は毎年繰り返されているだろうに、酔っぱらいオヤジは今まで気にもとめなかったのだ。

「柳原千草園」の近くまで来て、新たな季節の主役の音色が聞こえてきた。
鈴虫の音色だ。
外気の熱さを和らげるような涼やかな音色は、秋の到来を告げている。
そのことを蝉の亡骸は承知しているのだろう。
役目を終え、生を伝えたのだろう。
こんな都会の片隅で、季節の変わり目を実感できる酔っぱらいはどれほどいるのだろう ?
そういえば、カエルの鳴く声もいつの間にか消えているし、つい先日湿っぽい夜に我が家の玄関先まで遠征していた「ケロロ軍曹」の姿も見かけない。
こんなヒートアイランドで環境もおかしくなった都会でも、自然は季節を確かに主張し、気づく者にはその変化を伝えているのだ。
秋の夜長、なんて言葉が脳裏をかすめ、すでに飲んでいるにもかかわらず、冷えた日本酒何ぞを思い浮かべてしまうオヤジは、困ったメタボリッカーなのだ。
鈴虫の音色を聞きながら一献傾けるなんざ、オツじゃぁありませんか。
ああ、オヤジに生まれてよかった。

10:16:00 | mogmas | | TrackBacks