August 29, 2006

DOWN


「ヨシくん」家族が引っ越した建物にはエレベーターがあって、彼はエレベーターで上下するのがとても楽しいのだそうだ。
しかし「ヨシくん」のママによると、そのエレベーターは三菱製だが、整備は「シンドラー社」がしているとのことで、あんな事件があったので少々心配だという。
確かに。

まったく偶然だが、エレベーターは最も安全な乗り物だ、という主張をぶち壊す映画を見た。
2001年、オランダ・アメリカ作品。
脚本・監督、ディック・マース。
出演、ジェームズ・マーシャル、そしてナオミ・ワッツ。
白状すると、「キングコング」を見てナオミちゃんがちょっとお気に入りになってしまったのだ。
出世作「マルホランド・ドライブ」も見ていなし、「リング」ではなにも魅力を感じなかったのに、なぜか最近グッときてしまった。
1968年英国生まれというから、今年で38歳だというのに、可愛いくてコケティッシュですな。
その映画「DOWN」は、ディック・マース監督が過去に製作したものを自身でリメイクしたものらしい。

ニューヨーク・マンハッタンにあるランドマーク「ミレニアム・ビル」は、102階建ての超高層ビル。
高さ300メートルを超え、地上と最上階との気温差は10度以上にもなる。
エレベーターは73台、1日の利用者は3万人以上という規模で、最新鋭のコンピューターが制御する快適で安全な乗り物だった。
ひどい雷の夜をさかいに、エレベーターの事故が相次ぐ。
突然停止して人が閉じ込められたり、扉が開くがそこにエレベーターはなく、シャフトへ転落したり、扉に首を挟まれたところへ上からエレベーターが急降下して…。
しかし何度点検しても異常はない。
メテオ・エレベーター社の整備員マーク(ジェームズ・マーシャル)は不審を抱き、新聞記者ジェニファー(ナオミ・ワッツ)とともに事件の真相を調べ始める。
ところがそこには、軍の秘密実験が絡んだ、とんでもない真相が隠されていた…。

事件を捜査する警部補が劇中で、全米でエレベーターに閉じ込められたりトラブルに見舞われた人の数は、183万2千人だというセリフがあるが、それは報告されたものだけで、闇に葬られた事故はその倍もあるようだ。
エレベーターでの死者数は飛行機事故以上、というセリフもあったりして、生活に密着した地味なイメージの昇降機の安全神話は、映画公開時の2001年にはすでに崩壊しつつあったのだ。
「宇宙エレベーター」というとてつもないプロジェクトも浮上しているというのに、今日もどこかでなんらかのトラブルが発生しているのかもしれない。
それもこれも、もとをたどればコンピューターを過信した人災だということは疑う余地はないだろう。
映画はお気楽なホラー仕立てではあるけれど、毎日エレベーターを利用する人に取っては深刻な問題だ。

ナオミちゃんはこの映画の時点で33歳、女優として脂の乗り切っている時期ではあるが、ま、かる〜いジャブってとこかな。



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August 24, 2006

SUPERTMAN RETURNS


まちがいなくスーパーマンは帰ってきた。
彼がいなければバットマンも、ウルトラマンも、キャプテン・アメリカもナショナル・キッドも、誕生していなかったかもしれない。
不死身と不滅はヒーローの条件だから、現実がどんなに変わろうとも、いつかは必ずその人は帰ってくる。
そしてシンプルすぎる能力と、善意丸出しのボランティアな働きで、同じ移民仲間のアメリカ人を守るのだ。
筋骨隆々の青タイツの男の胸に、Sのマークが燦然と輝いていれば、それはもうスーパーマンとして世界中の誰もが認めるのである。
だから、彼の話に些細な突っ込みを入れるのは無粋というものだ。
たとえば「変身する際に脱ぎ捨てた服は回収しないのかい」とか、「食ったり飲んだりして、出すもんもスーパーなのかい」とか、「小さな親切みたいなことばっかしてないで、紛争地域へ飛んでいって止めんかい」などということを考えてはいけないのだ。
理屈抜き、これがスーパーマンを観賞するときのルールなのだ。
日本でいやぁ、「水戸黄門」だね。
葵の印籠とSのマークは絶対です。

スーパーマンと共に帰ってきたのは悪役レックス・ルーサーだ。
1978年版のジーン・ハックマンのふてぶてしい感じもよかったが、ケビン・スペイシーの冷酷なユーモアをたたえたクレイジーなルーサーもとてもいい。
やはり徹底的な悪に魅力がないと、ヒーローも精彩を欠いてしまう。
スーパーマンの弱点を知り抜いているケビン=ルーサーは、新人スーパーマンをより魅力的に彩るスパイスなのだ。
人が何十億死のうと意にかえさない男が、少々トロイ愛人を自ら手をかけられないというおかしさが、悪の天才ルーサーの弱みとしてまた秀抜だ。

スーパーマンの能力は変わらないが、1978年の映画の時とは、映像技術的に格段の進歩を遂げている。
空を飛ぶということがまったく不自然ではないし、予告編でおなじみの銃弾を目ではじき返すシーンなどは、ほんの序の口にすぎないほどの驚愕映像てんこ盛りだ。
上映時間154分という長さも気にならないくらい、スーパーな音響映像を堪能できる。
「スターウォーズ」シリーズが証明したように、映像革新はこういった大作が出来るたびにおこなわれ、今回も「ジェネシス・デジタル・カメラ・システム」が全編に使われたりと、この映画の成功によってさらにデジタル撮影が加速されるだろう。
フィルムは遠くなりにけりだが、それは時代の趨勢だ。

エンドタイトルが流れる中に、「故クリストファー・リーブ夫妻に捧ぐ・・・」という献辞が表れた時、ちょっとグッときた。
ウーン、DVD買っちゃおうかなぁ。
これでまた新しいシリーズが復活するのは確実だ。
スーパーマン=ブランドン・ラウスの肉体が衰えないかぎり、スーパーマン旋風はしばらく続くだろうな。
どうせなら従妹の「スーパーガール」も登場してほしいものだ。
「スーパーガール」役にはジェシカ・アルバかキーラ・ナイトレイか。
ウーン、悩むなぁ・・・。 




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August 17, 2006

グエムル/漢江の怪物

  
漢江はソウルの中心を南北に分けて流れる、雄大な川である。
広い河原でバーベキューをしたり、釣りをしたり、思い思いに人々がくつろぐ場でもある。
その河原で売店を営むパクー家の長男カンドゥは、妻に逃げられ、なにをやってもダメダメの36歳。
中学1年生の一人娘ヒョンソが、まっとうに育ってくれることだけを願う彼の目の前で、突然川を破って現れた体長20メートルの怪物=グエムルにヒョンソがさらわれてしまう。
グエムルは逃げまどう人々を蹴散らし、食い殺し、河原をパニックに陥れて何処へか消え去る。
すぐさま在韓米軍と韓国軍が出動し、漢江一帯には戒厳令がしかれ、怪物が未知の病原体のホストであるかもしれないということで、パクー家の全員と河原にいた人々は病院へ隔離されてしまう。
そんな中、愛娘の死を受け入れられないカンドゥの携帯電話に、弱々しい声のヒョンソから電話がかかってくる。
娘が生きている、このわずかな希望にパクー家の人々は一致団結、監視の目を逃れヒョンソ救出へと向かうのであった・・・。

前作「殺人の追憶」という問題作をヒットさせたボン・ジュノ監督の演出はスピーディーで歯切れが良い。
ときにユーモアたっぷりに人物描写をしていくのと対極に、怪物=グエムルの不気味さは際立ち、自分を誕生させた人間への憎しみで凶暴な殺戮を繰り返すという怪物モノのセオリーが生きてくる。
怪物・クリーチャー好きにはうれしいことに、暗闇で見えたか見えないかというもったいぶった演出ではなく、物語の初っぱなから白昼堂々全身を晒し、暴れまくるのだからたまらない。
TV・CMでも流れている、グエムルの尻尾に巻かれてさらわれるヒョンソのシーンも見事で、特撮は将軍様の「ブルカザリ」とは比較にならない出来映えだ。
さんざん焦らして“コイツかよっ ! ”と一気にショボくなる、安手のハリウッド製怪物モノを見飽きた人にも-造型の好き嫌いはあるでしょうが-新鮮で、あとのドラマに引きつける演出はやられたね。
また、「わたし、怪物モノなんて」とためらう韓流ファンも納得の韓国ドラマになっており、名優ソン・ガンホやピョン・ヒボンの演技はさすがです。

だがこれはあきらかに怪獣映画ではなく、怪物映画なのだ。
日本製怪獣映画の不幸は、怪獣の巨大さとエスカレートする光線技の多様で収拾がつかなくなって、子供だましに成り下がってしまったことだ。
リアルサイズの怪物モノには、まだ無数の可能性があることをこの映画は教える。
そして、怪物誕生の根は、38度線や在韓米軍という不自然な現実にあることも、チクリと告発することを忘れていないのである。

もしも、荒川や隅田川からこんな怪物が現れたらと想像して見ると、より楽しめるのではないでしょうかスミダ。

10:58:00 | mogmas | | TrackBacks

August 12, 2006

パイレーツ・オブ・カリビアン

  
この手の映画はあまり見ないはずのかあちゃんが、なぜか見に行きたいというので、ポケモンとライダーとその他アニメでごったがえす「亀有MOVIX」へ行った。

今回のオヤジの視聴ポイントは3つ。
1、キーラ・ナイトレイちゃんのご様子。カッチョイイか、露出が多いか・・・。
2、海賊デイヴィー・ジョーンズとそのご一行の「クトゥルー」的な造型。
3、怪物クラーケンの造型。
以上。


中盤で眠くなりました。
一つ一つのエピソードはまあまあ面白いんだけど、いかんせん長い。
長過ぎてテンポが悪い。
ジャック・スパロウの間抜けさばかりが目立ち、退屈な展開にまぶたが重くなってしまった。
1、2、3ともに今イチ。
しかも次回へ続くってのは、調子こき過ぎ。
もう次はDVDで十分です。

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August 09, 2006

太陽

   
銀座「シネパトス」、初回の劇場の入りは130%というところか。
観客の7割りが50歳以上と見受けられる。
2回目のチケットも整理券が配られ、早くも満員御礼だ。
「昭和天皇」を描いた「太陽」は、日本での劇場公開が危ぶまれていたが、ようやく一般公開と相成った。
しかも、天皇の「靖国発言メモ」が公表され、プレスリー好きの総理大臣が参拝するかどうかと内外から注目を集める、8月15日を前にしてのタイミングのよさだ。

静かに、とても静かに映画が始まる。
イッセー尾形を知っている観客は、最初彼の一流のモノマネとしてその人物を見る。
しかしいくらも経たないうちに、それがモノマネではなく、1945年の8月に、この国の誰よりも苦悩していた人物そのものであることに気がつく。
穏やかで控えめなその人物が、内に深い悲しみと憂いを抱えていることを知る。
防空壕の中で、たえず低く聞こえる機械音や電波のノイズ、焦燥感を煽るような音楽が、主人公とこの国が置かれた状況を物語る。
主人公はけっして激情に駆られて叫んだり、衝動的な言葉を発したりはしない。
ある程度の年齢の人なら記憶にある映像の中で、昭和天皇が口をモゴモゴとさせ、浮かんだ言葉を反芻・咀嚼し、ゆっくりと話し始めるクセを思い出すだろう。
イッセー尾形の演技はパロディではなく、まさに神が宿ったかの如くその様を再現した。
インタビューで彼はこう言っている。
「劇中で陛下は自分を神とあがめることを否定します。一人の人間が『自分は人間である』と宣言する。なんて悲しい、なんてナンセンスなんだ、と思いました。これを世界中で唯一、背負わされた人間が昭和天皇。あの大変な時期に、権力の頂点に立たれた。これは想像を絶することです」

この映画は、プライベートな「昭和天皇」を真っ正面から捉えた世界初のフィクションだ。
ロシアのアレクサンドル・ソクーロフ監督の演出は、重厚で静謐で幻想的に、日本のターニングポイントとなるこの時代を「天皇ヒロヒト」のごく周辺だけで描いてゆく。
ナマズと平家ガニに造詣の深い天皇の夢の中では、B-29は奇怪な魚となり空を飛び東京を焼け野原にする。
明治天皇が目撃したという「極光」の意味について悩み、闇に包まれた国民の前に太陽はやって来るだろうからと、居所にジープで乗り付け、無礼な振る舞いをするアメリカ人に、おどけたポーズで写真を撮らせもする。
調子に乗った彼らは、天皇が「チャーリー・チャップリン」に似ていると囃し立て、「バイバイ、チャーリー」と去ってゆく。
そして、ダグラス・マッカーサーとの会見。
自身がある意味独裁者であるにも係わらず、頭ごなしに「ヒトラー」の同類として天皇を見るマッカーサーは、そのやんごとない人柄に触れ態度を軟化させるものの、ハバナ産の葉巻どうしをくっつけて火をつけ、煙を天皇の顔に吹きかけるという無礼を平気でやってのける。
様々なユーモラスなシーンが観客から笑いを引き出し「人間天皇」を際立たせるが、すべて、今でもこの国ではタブーな表現ばかりだ。
現在でも天皇を「現人神」と思っている人はいるのだろうか ?
映画の冒頭から、佐野史郎演じる侍従長が「お上」と呼ぶのをきいて、若者は「お神」と捉えるのだろうか ?

前略おふくろ様、桃井かおりが皇后を演じるとは思いもよらなかったわけで、天皇の人間宣言を録音した技師が自決したことを聞いた皇后が表情を一変し、戦争という殺戮を繰り広げた男たちに憤怒と哀惜の瞳を向けるシーンは圧巻でした。
焼け野原の東京にエンドタイトルが流れ、スクリーンの右下に白い鳩が時おり姿を見せる。
それはジョン・ウーの映画のように画面を横切ってスローモーションで飛ぶ主張などせず、見落としてしまうくらいのさりげなさだ。
ハリウッド映画に出てくるヘンな日本人はこの映画にはいないし、実によく調べ、日本的な“こころ”を描いている。
この映画が日本で作られたものではないということが、今の我が国の現状を如実に表していると思う。
しかし、天皇やその時代に多くの人が関心を持ち、自分なりに解釈できるということはとてもいいことだ。
まずは、偏見を捨てて見ることだ。
どこかの愚か者が喚いて難癖を付け、上映中止のようなことにならない前に・・・。

ちなみに、「シネパトス」で立ち見といわれても、諦めずに入場して一番前に行き、
端の階段状になっているところに座れるのだ。
まあ、苦にならなけりゃぁ、男らしく立ちっぱなしでもいいけどさ。

10:39:00 | mogmas | | TrackBacks