November 28, 2006
オバケなバーバーくん
雨の朝はよく寝れる。
寒い日ならもっとよく寝れる。
二度寝だとものすごくよく寝れる。
そうして遅くに目覚めると、かあちゃんが言った。
「おばあちゃん、とうとう見れるようになっちゃったみたいよ」
「 ? ? ? 」
寝起きの頭じゃなくても、唐突なかあちゃんの話は理解不能だ。
トイレですっきりしたあと、最初から話を聞いた。
今朝、7時前のこと。
いつものようにばあさんはクイックルワイパーで、しゃらしゃらとお掃除をしていたそうな。
2階から階下へ下りていく途中、ふと気配を感じて上を見上げると、人の影が見えたらしい。
“あれ、こんな時間に誰かしら ? ”と、“お客さんでも来ているのかな ? ”と考えたばあさんは、きっと「仙台のとこやさん」だろうとそのまま階下で掃除を続けた。
しばらくしてまた気配を感じたので、階段から上を見ると、人影が階段を上がっていったらしい。
やがて、7時半に起きたかあちゃんと小僧に、ばあさんはその話をしたのだった。
「仙台のとこやさん」とは、そりゃ「バーバーくん」しかいないだろう。
連日連夜大お疲れの「バーバーくん」は昨日はお休みで、久々に酒を抜いたかもしれず、当然店には顔を出していない。
そんな彼を自宅に呼ぶはずもなく、まして早朝7時前に、こちらが夢の中にいるときに、彼が階段を上り下りしているなんてことはないわけで、ばあさん曰く“子供のようなとこやさん”の身に生死にかかわるような何かがあって、幽体離脱してオヤジに恨み言のひとつも言いに来たのだろうか。
しかし、「バーバーくん」とばあさんは顔を会わせてはおらず、なぜ影だけで彼と言えるのだろう ?
「オーラの泉」にどっぷり浸かってしまうかあちゃんは、ついにばあさんが見えないものが見え、聞こえないものが聞こえる、いっちゃった状態になってしまったのだと、真剣にオヤジに向かって言うのである。
ハイ、ハイ、そうですか、ま、コーヒーの一杯ぐらい飲ませてくださいな。
フン、「昭和の酔っぱらい」め、飲み過ぎてアストラル・ボディを我が家に送り込んだのか。
はたまた「唾飛ばし分身の術」で我が家の夫婦生活を覗き見ようって魂胆か。
ようし、敵がそうならこちらも「遠隔鼾バズーカ砲」で寝込みを襲ってやる。
なんてことをつらつら考えながら昨日の朝刊を読んでいたら、「幻視で気づく/レビー小体型認知症」という記事を発見した。
聞き慣れない「レビー小体型認知症」とは、アルツハイマーや脳血管障害による認知症とともに「3大認知症」と数えられ始めた「幻視」をともなう認知症らしい。
これは脳にレビー小体というタンパク質の塊がたまって、神経細胞が変性する進行性の認知症で、特徴としては幻視や錯視、誤認などが繰り返し出て、実際にはいない人(子供が多い)や虫、小動物などが見えたり、同居する家族を他人と見間違えたりするという。
また、パーキンソン病と同じグループの病気で、筋肉のこわばり、小刻みな歩行などのパーキンソン症状が出ることも多いのだそうだ。
う〜む、むむむむ、断定するのは危険だが、まさに今朝のばあさんの言動は当てはまる。
とくに「子供みたいな仙台のとこやさん」とは、まさにその通り。
不肖の息子として親の大事をほっておけないので、もう一度くわしくその話を聞いてみて、忘れていた事実を思い出した。
ばあさんが掃除をしていたまさにその時刻、無理矢理棺桶の蓋を外されたドラキュラ伯爵のように、不機嫌で死にそうな夢遊病者のごとく、オヤジはトイレに起きたのだった。
半分以上寝ている状態で、それでもタンクを空にした安堵感が消えないうちに、そそくさとまた寝床に戻った。
ばあさんが見たというその人影は、オヤジであることは疑う余地がない。
しかし、「子供みたいな仙台のとこやさん」と大事な息子を見間違えるとは、なんと嘆かわしや母上様。
なに、「シジュウクサイのくせに、暴れん坊の刈り魔王とレベルがいっしょ」と誰かいったか ?
そんなことを言うヤツには、寝床の中から「超遠隔・アカネ流寝返り起こし・鼾バズーカスペシャル」をお見舞いしてやる !!!
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