December 27, 2007

少年探偵・春田龍介

  
春田龍介くんは中学2年生。
成績優秀のうえ、蹴球も野球も得意な利発な少年だ。
お父様の春田博士は大学の物理の教授で、驚異の無燃料機関を搭載した「C・C・D潜水艦」を発明し、世界中の学者と軍関係者から注目と羨望の的になっている。
だがその発明を狙った、某国の軍事探偵や悪漢共が次々と春田くんと父上に襲いかかってくる。
しかし頭脳明晰で、拳銃の腕前も人一倍、自動車を操り警視庁にも顔が利く少年探偵・春田龍介くんは、相棒のメリケン壮太とともに敢然と謎と悪に立ち向かい、ことごとくこれに打ち勝つのである。

素晴らしい !
かの「山本周五郎」の知られざる探偵小説全集の第一巻。
時は大正末から昭和のはじめ頃、口に糊するため書いたという側面もあるだろうが、当時の少年少女(いや、現代の反省期の少年も)はワクワクして読みふけったに違いない冒険活劇の主人公像は、鉄人28号を駆る金田正太郎くんへと綿々と引き継がれてゆく少年探偵の王道だ。
なんたって後に時代小説の名作を生み出した「山本周五郎」のストーリーテラーたるや、子供向けとは侮れない展開とセリフの妙で読ませます。

長いこと異星の水に慣れてしまっている「宇宙人ジョーンズ」も、メリケン壮太のベランメイな口調や、大時代な言い回しを読めばグッと来ちゃうのは間違いない。

「へん、オイラの親分は龍介さんで、そしておいらはメリケンの壮太よ、矢でも鉄砲でも持ってこい !!」
「ええ、ようござんすとも。あっしにゃ学問のことはわからねぇが、鬼の一疋や二疋ぶち殺す役ならいつでも引受けますよ」
「やかましいやい毛唐め、おいらぁ拳骨(メリケン)壮太さまだ。サルビヤ号で喰らった拳骨の味を忘れやがったか」

てな具合。
少年探偵・春田龍介の大活躍で解決した事件で感化を受けたメリケン壮太は、不良青年をやめて、忠実な助手として働くのだった。

なんせ各タイトルからして冒険活劇な感じである。

「危うし !! 潜水艦の秘密」「黒襟飾(ネクタイ)組の魔手」「幽霊屋敷の殺人」「骸骨島の大冒険」「謎の頸飾事件」「ウラルの東」「殺生谷の鬼火」「亡霊ホテル」「天狗岩の殺人魔」「劇団・笑う妖魔」

いやぁ、グッときちゃいますねぇ。

この「山本周五郎」探偵小説全集は、居候の「写メ子」が「反省期」にプレゼントしてくれたものだ。
第一巻の「少年探偵・春田龍介」と第二巻の「シャーロック・ホームズ異聞」を贈ってくれたのだが、別冊も入れて全七巻の内、現時点であと二巻発売されている。
たまらず、先日ネットで第三巻「怪奇探偵小説」を注文してしまった。
一話一話が簡潔で読みやすく、ちよっとした気分転換がてらに読めてしまうので、眠れない昨今ちょうどいい読物になっている。

ところで、贈ってくれた「写メ子」は「山本周五郎」を知らなかったし、読んだこともないという。
嗚呼、嘆かわしや。
テレビのCMで若者が「椿三十郎、サイコー」などと言っておるが、その原作は「日々平安」で、黒澤明監督作品では「赤ひげ」「どですかでん」、最近では「雨あがる 」小泉堯史監督、「かあちゃん」 市川崑監督、「海は見ていた」 熊井啓監督、
「SABU 〜さぶ〜」 三池崇史監督と続き、その他テレビや舞台にも多く取り上げられている。

「樅ノ木は残った」 「赤ひげ診療譚」 「天地静大」 「五瓣の椿」 「青べか物語」 「季節のない街」 「さぶ 」
など名作も多く、文豪というに相応しいが、「直木賞」を辞退した唯一の作家で、「つま先立ちの文学」などと記憶していたが、どうも事実はそうではないようだということが、本の巻末の編者解説を読んでわかった。

本は読んでいるからといって、偉そうなことを書いたが、「山本周五郎」の生い立ちやら細かなことはほとんど知らなかった。
不勉強も甚だしい。

本名「清水三十六」(しみず さとむ)。
大正5年に小学校卒業と同時に質店の「山本周五郎商店」に徒弟として住み込み、店主の「山本周五郎」が文芸に理解を持っていたため、独り立ちするまで様々な面で援助を受けたことへの恩義からか、のちにペンネームを「山本周五郎」としたようだ。

ヘーぇ、こりゃ改めて、自宅にある蔵書を読み直した方がいいな・・・・。

Posted by mogmas at 10:44:00 | from category: 前頭葉発熱親父 | TrackBacks
Comments

ジョーンズ:

生きることがすべてだ!
それを受け入れて毎日を楽しむ。
できるだけ良く生き、多くを期待せず、人を損なわず、卑しめもせず、
過ちを暴き立てずに、すべての美しいものを汚さず傷付けず、
およそ生きとし生きるものすべてを敬う。
これはジョーンズの生き方そのものであり、山本周五郎の小説のテーマのようである!自画自賛!!!
お粗末!どですかでん、どですかでん。
(December 27, 2007 13:58:57)

mogmas:

温泉卓球という楽しみも忘れてはいけませんね。
どでかちん、どでかちん。
(December 28, 2007 12:46:14)

ジョーンズ:

私は、○ック ミネ ではないのでそんなに「どでかちん」ではありません!
これが今年最後のコメントだと思うと残念!
でもでも 来年のよろしく!
良いお年を・・・
(December 28, 2007 13:24:49)

mogmas:

お飲み初めは、ぜひっ !!
(December 29, 2007 00:30:46)
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