March 24, 2008

4人目の助っ人

  
「auちゃん」はご機嫌ななめだった。
“モグラのおじちゃんとおばちゃん”が遊んであげる余裕がなかったからだ。
それはお店的にはいいことなのだけれど、若干4歳の常連さんにはご不満なことなのだ。
あの手この手でなだめようとしても、おしゃまさんな彼女はなかなか駆け引き上手で、いったん曲がったヘソはなかなか元に戻らない。

「ねぇauちゃん、もうすぐバーバーくんが東京に来るんだよ。楽しみだねぇ」

一瞬キョトンとするが、首を横に振る。
「バーバーくん」が東京に住んでいたときは、電話で呼び出すくらい大好きだったのに、嗚呼なんと4歳児にも忘れられる不運な男。

「auちゃんバーバーくんのこと大好きだったでしょ。嫌いになっちゃったの ? 」

今度はキッパリ首を縦に振る4歳児。
本人不在で完全否定される哀れな「バーバーくん」。
あまりに可哀想な仙台の調子コキを気遣い、パパとママは早々に帰る決断をした。

その様子を、まるで六法全書を読みふけるようにメニューと睨めっこしていた「ヨウコリン」が窺っていた。
常連歴では「auちゃん」にかなわない「ヨウコリン」は、それでも大人の女性らしく冷静を装い、姫の怒りに触れないよう、目と口を半開きでカウンターのオブジェと化してやり過ごした。

「auちゃん」ファミリーがお帰りになっても、「ヨウコリン」の地蔵のような半眼半口はそのままで、全メニュー完全制覇を宣言した“知的でスリミー”な娘とは思えない放心状態だった。
いささかテンバっていたかあちゃんが声をかける。

「ヨウコリン、ヒマだったらちょっと手伝う ? 」

その瞬間、止まっていた「ヨウコリン」の時間に光が灯り、素直なこぼれるような笑みで「ハイ」と答えた。
バンダナとエプロンをつけた「ヨウコリン」は厨房に入り、さすがに毎回メニューを熟読するだけあって、伝票にオーダーを書くのも呑込みが早く、緊張で顔が赤くなってはいるものの、「いらっしゃいませ」と「ありがとうございます」もきちんと声が出せるし、カウンターの向こうの超天然「ヨウコリン」しか見ていなかったオヤジとかあちゃんは、いささか見直したり、ありがたかった。

食洗機で洗い終わった皿を拭いている姿を見て、この娘は親御さんからきちんと躾けられたお嬢さんなんだなと改めて思ったが、背中を向けていてもアタフタとした緊張感が伝わってきて、それがちょっと可笑しかった。

「ヨウコリン、お客さんから聞かれたら、アルバイトの女子大生だと言っておくからね」

と言えば、

「ま、そりゃもう、ワタシったら、そう見えてしまうのはしょうがないですから、ほんとに」

いつもの“舌・好調”の「ヨウコリン」なのである。
本当の現役の女子大生のアルバイト「ミキちゃん」がいない間に、先日の「akkoちゃん」に続き、自称女子大生のバイトがふたり目になった。
まあ、それはそれで、ほんとにありがたいことであります。

そして記念にと、バンダナ・エプロン、巨大コテをもった姿を写メに撮るのも恒例。
しかし、極度の恥ずかしがりやの「ヨウコリン」の姿をここでお目にかけることはなりません。
“可愛い ? ” “女子大生 ? ”のアルバイトがいたら、その言動から正体を推測してくださいませ。

助っ人ナンバー4、「ヨウコリン」ありがとう !!






Posted by mogmas at 15:12:00 | from category: 前頭葉発熱親父 | TrackBacks
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