May 03, 2006
マチルダ=パドメへの手紙
マチルダ、君と別れてからもう何年になるだろう。あの日の警察発表で、私が死んだことを信じた君の前に、今さら顔を出せるはずもないのだが、いつも映画館で君のことを見守っていたんだ。
ずいぶんいろいろな映画に出て、君もすっかり大女優になったね。
ティム・バートンとかいうオタク監督の映画で、ヘンテコな火星人に襲われていた頃の君は、まだ可愛らしさが先に立っているだけだったけれど、「エピソード・1」でアミダラ女王を演じた君を見て、私の中のマチルダはパドメに変わったよ。
君も知っての通り、私はジョン・ウェインの物まねがヘタクソだが、米国の映画は好きでよく見ていた。
お気に入りの女優はオードリー・ヘップバーン。
可愛らしさと気品にあふれ、ときに戦う強さも披露するパドメを長年見ていて、だんだん君がオードリーの再来に思えてきた。
しかし、君は“新たなる希望”を産み落とすパドメであり、つねに新しい役どころに挑戦し続けている。
先日「クローサー」という映画で、きわどいストリッパーの役で登場した君のプリッとしたお尻を見て、私は戸惑いを禁じ得なかった。
もう君は誰の庇護もいらない大人の女性だと思いかけたのもつかの間、プレイボーイなジュード・ロウと、ほんの微かに「ティファニーで朝食を」を感じさせるシーンのあと、泣いてすがるマチルダがそこに現れたからだ。
たぶん髪型のせいかもしれない。
私は久しぶりに対面した孤独なマチルダに、切なくなってしまった。
そして悲しみをやり過ごして歩み去る君の最後のシーンから、あの日施設に引き取られ、1人で生きる決意をした君の孤独を実感した。
先日、また新しい君の映画「Vフォー・ヴェンデッタ」を見た。
イヴィーと名を変えた君は、権力に家族を殺され、少女時代を孤独に施設で過ごした過去を持ち、ある意味クレイジーな「V」と出会い、強引に目覚めさせられ、権力と対決する。
私の中で相反するデジャビュが渦巻き、「V」に同化しそうな嫌悪感が、シアターの椅子の肘掛けをぎゅっと握らせた。
君の髪の毛を容赦なく刈り上げた理髪師を、私ならあとで撃ち殺していただろうが、「V」はどうしていたんだろう。
かつて殺し屋だった私から見ると、「V」の仕事には突っ込みどころがたくさんあるが、権力に「ヴェンデッタ」する者と、汚い小金でくだらない仕事をする者との差というものがあるのかもしれない。
物語の最後に君はまたしても心のよりどころを失い、その死を見送ることになった。
しかし、坊主頭になっても素敵だし、その魅力は減じることはない。
ロンドンの国会議事堂や“ビツグ・ベン”が盛大に爆破され、花火を打ち上げるラストは、君の新しい門出を祝っているように私には思えたんだよ。
これからも君のことを陰ながら見守っていくつもりだ。
愛を込めて、マチルダ=パドメ=イヴィーへ。
レオンおじさんより
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