May 23, 2006
タコは見ていた
ふと後ろを振り返ると、そこにはタコの足がありました。タコの足は1本ぽつんと行儀よくそこに座っていました。
居間で新聞を読んでいる時、視線を感じて振り返ると、やはりそこにはタコの足がありました。
タコは同じ姿勢のまま、じっとこちらを見つめているのです。
トイレでしゃがんでいました。
気がつくと戸のかたわらに、タコの足が静かにかしこまっているのです。
なんだか寒くて、布団にくるまって寝返りを打ちました。
視線の先にタコの足が休んでいました。
穏やかな寝息をたてているような気もします。
家の中では、どこにいてもタコの足に見られているのです。
それはわたしだけが感じている幻想なのか、かあちゃんに聞いてみることにしました。
テレビを見て背中を向けているかあちゃんの肩を叩きました。
かあちゃんが振り向きます。
わたしは切なくなりました。
なんとかあちゃんの口には、あのいつものタコの足がくわえられていたのです。
タコがかあちゃんなのか、かあちゃんがタコなのか・・・。
浅い眠りから覚めたと同時に、右足の太ももの付け根が激しくつりました。
七転八倒、脂汗をかいてもがくこと数分。
ようやく治まった右足をさすりさすり、着替えます。
珍しく7時前におきたわけは、市場に行ってタコを仕入れるためです。
タコ屋の兄さんに「今日は早いね」と笑顔で言われました。
店でタコをバラすと、夢で見たあのお馴染みのタコの足にまた会えました。
おかえり、タコちゃん。
タコの足がなんだか笑ったような気がしました。
タコはなんでも知っているのでしょう。
実はわたしがタコオヤジなのかもしれません。
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