June 28, 2006
小僧の石
夕方、いつものように、働いている福祉作業所から小僧がニコニコしながら帰ってきた。
店に入って来るなり「でた!でました!」と大声をあげ、満面の笑みでバッグをまさぐり、小さなビニール袋を取り出した。
「何がでたの?」と訊ねると、「石がでました。本日11時45分にでました」という。
「トイレででたの?」と聞くと、「そうです。作業所のトイレで11時45分にでました」と答えた。
うーん、正確に時間まで記憶しているとは、よほどうれしかったのだろう。
ビニール袋に入っている鼻クソほどの大きさの物体は、軽石のような質感で、しかしこれが体内で成長し、尿道を通って排出されるまでには、どれほどの時間を要したのだろうかと思う。
痛み止めと、石を溶かすクスリを飲んでいたことと、若さのために、苦痛を訴えてからさほど時間がかからず異物はでてきたが、入院も手術もすることなくて本当によかった。
若いから放尿にも勢いがあるのだろうが、よくまあ痛みも無く飛び出たものだ。
それをキンカクシに手を突っ込んでつまみ上げた小僧も冷静だったが、袋に入れてくれて持たせてくれた作業所の職員の方にも頭が下がる。
オヤジを筆頭にかあちゃん、ばあさんと続く石の犠牲者は、しかし誰もまだ現物の石を見たことはなかったのだ。
「でたぁ、ついにでたぁ」と凱歌をあげて、石の苦しみから解放された小僧は帰って行った。
その夜、あらためて石の鑑賞会がおこなわれた。
爪楊枝と比べてもこの大きさ。
こんなもの一つで、大の男が脂汗を流し、七転八倒の苦痛を味わうのだから、巨大な胆石を抱えた人はそれこそ地獄だろう。
人間は残念ながら、ニワトリとか恐竜のように、石を利用できないのだ。
今後も「砂肝」を食べるのは要注意だな・・・。
眠る前の一時、オヤジの頭の中では「吉田拓郎」の「ローリング30」の一節、「ローリング30 動けない石になるな ローリング30 転がる石であれ」が流れていた。
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