November 06, 2005

転げ落ちた思いで

ヒトリモンが椅子から転げ落ちた次の夜。
懐かしい人が店に来てくれた。
かつてオヤジが椅子から転げ落ちた原因をつくり、介抱してくれた人物、AKさんだ。

今から13、4年前、Cちゃんの旦那さんよりスチャラカで、“悪魔のあっくん”よりもズンドコベロンチョなお勤め人をしていたオヤジは、神田にあったさるお店に深く係わり、その店の店長をしていたAKさんとは毎日のように会い、仕事にかこつけ、洒落たバーカウンターで1杯やっていた。
そんなスチャラカベロンチョな営業マンでも、親会社の社長はすごくよくしてくれて、店名までオヤジの案を採用してくれた。
新築のビルの現場で、ゼネコンオヤジに小突き回され、発注した機器の納期の遅れに悩まされ、次々と降り掛かる問題をくぐり抜けて、やっと完成しオープンに漕ぎ着けてから、1週間ほど経過した晩のことだ。

仕事に係わった同僚らと、ビルの2階にあったウェイティングバーで、新ためてお祝いと労いを兼ねた飲み会を行った。
無事仕事が終わり、すっかり緊張が解けて解放されたオヤジは、AKさんの注れてくれる生ビールをガンガンやり、今夜は壊れてもいいと油断してしまったのだ。
洋酒も豊富に置いてある店の、棚の端から飲みまくる勢いでオーダーをしていくうちに、気も大きくなって、AKさんがいたずら心で出してくれた、世界最強の超悪魔のウォッカ「スピリタス」96度!画像の表示を駆け付け3杯一気飲みし、4杯か5杯目かで意識が飛んだ。

その後のことは同僚とAKさんの証言に基づくので、多少の脚色はされているかもしれないが、いずれにしてもオバカな話だ。

4、5杯目の「スピリタス」をカッと呷ったオヤジは、不敵にニヤッとし、続いて大笑いをしたかと思うと、そのまま椅子ごとゆっくりと真後ろに倒れていったそうだ。
店内の誰もが、たちの悪いギャグを見ているように凍り付いたという。
酔っぱらいの不思議な習性として、絶対ケガをするような場面でも、かすり傷1つ負わずにケロッとしていることが多々ある。
まさにその時のオヤジがそうだったわけで、ものすごい音とともに床に叩き付けられたにも係わらず、不敵な笑みは絶やさず、幸せそうにくたばっていたらしい。
その後、救急車のお世話になることもなく、人目につかない部屋に運ばれ、明け方、酸っぱい息とともに意識を取り戻し、人としてあってはならない状況に頭を抱えたのである。

しかし、人間こうして成長していくのである。
今では「スピリタス」は舐めるように飲む、という技を覚えたので、二度と同じ過ちはしないのだ。

が、AKさんとの話を横で聞いていたかあちゃんは、特別に蔑んだ目で、“こいつらどうしようもない”というように首を振るのであった。

15:14:16 | mogmas | | TrackBacks

悩むクールガイ

「キャラリーマン」というすばらしい造語の作者、M・M姉妹のおねぇ様は「ボケブリ天国」なエピソードを時々披露してくれる。

ある日旦那さんとご飯を食べに行った時のこと、お店のテレビで古い日活のアクション映画をやっていたらしい。
ソフト帽にたぷっとした背広の登場人物(宍戸錠だったらしい)があるお店に入って行くシーンを見た彼女は、
「この映画、寅さん?」
と、無邪気に発言したとか。
帽子にゆったりめの背広=寅さん、という擦り込みは素敵。
愛すべきキャラですな。

そんな話を聞きながら、ふと疑問が生じた。
宍戸錠=エースのジョー。
石原裕次郎=タフガイ。
小林旭=マイトガイ。
赤木圭一郎=????・・・。

あれれ、思い出せない。
トニー=赤木圭一郎は何ガイだったっけ?
「アカガイ」や「ツブガイ」でないことは確かだ。
「ソウテイガイ」や「アンコクガイ」でもありえない。
いやはや、薄っぺらであやふやなオヤジの知識が、図らずもM・M姉妹のお姉ちゃんの「寅さん」発言から暴露されてしまった。

さらに追い打ちをかける質問が、別のカップルから・・・。
「納豆の起源っていつですか?」
おいおい、ワシは「マンガ始めて物語り」ではないぞぃ。
ただの納豆好きの、お好み焼き屋のおっさんにすぎないのですよ。

強烈なワンツーパンチをくらい、ぐうの音も出ない。
くそう。
この悔しさをバネに、よりいっそうほら吹きに磨きをかけてやる。
その時まで、若者よ、せいぜい楽しむがよい。



13:52:23 | mogmas | | TrackBacks

ヒトリモンの秘密

悪魔の酒version-2を自ら持ってきて、椅子から転落するまでいい気持ちちゃんになるヒトリモンの秘密の一端を、今夜訊いた。
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独占取材にはそれなりの代償は必要である。
今夜の舞台は、Eママが適度に盛り上げてくれた最後の砦なのだ。

なんと20代の終わりに、ヒトリモンは単身インドに渡り、坊さんの修行を有料でしていたのだ。
あの“フンチャラ真理教”の連中が着ていた白い修行服のような物を着て、「アーユルベータ」だとか小難しいことを真摯に学んだらしい。
その修行の過程で、超能力のような力が身に付いても、決して生臭い用途に使ってはならないといわれたらしい。
サイババやエスパー伊藤のような芸人に落ちてはいけないと釘を刺されるらしい。
修行は2、3週間続き、その間伝説の聖人(片足や片腕を上げたままで、何年も岩の上で姿勢を変えないような)も目の当たりにしたということだが、オヤジ的にはそのおっちゃん連中が、用足しだとか、飯を食うところがあるのかどうか知りたかった。

「神の河」1本空けて、確信に迫るオヤジの舌鋒は容赦ない。
カースト制度が根強く残るインドで、観光客に“毛”が生えたような修行を有料でしたところで、なんになるのだろうと思う。
しかし、本や情報で知っているということと、現実に足を踏み入れることとは大きく違う。
ヒトリモンの体験には敬意を表する。

そんな修行を経たヒトリモンは、オヤジがかつて会ったどんな酔っぱらいよりもニコヤカで、決して怒らない。
大らかな上に、金払いもいい。
つまり、赤子の手を捻るように扱いやすい酔っぱらいなのだ。
だが、それも修行の賜物だということらしい。
以前のヒトリモンは、仕事のことやプライベートのことで、酒の席のちょっとしたことでも、怒ったり、感情を露にしてしまうことがあったそうだ。
しかし修行後、そんな世知辛い感情に流されない、正しい酔っぱらい精神を獲得したのだ。

最後の砦までの道すがら、始めて千鳥足ではないヒトリモンの歩行を目の当たりにし、修行の話を聞き、ひとしきり飲んだ揚げ句は、教科書に載せたいくらいの正しい千鳥足で帰るヒトリモンを見送り、まだまだ修行が足りないと実感するオヤジなのであった。


03:16:15 | mogmas | | TrackBacks